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なぜ大阪桐蔭の主将が「自分たちは力が足りない」と繰り返すのか… 高校野球最強校に芽生えた「恐怖心」のきっかけ〈3度目春夏連覇へ〉

posted2022/07/18 06:01

 
なぜ大阪桐蔭の主将が「自分たちは力が足りない」と繰り返すのか… 高校野球最強校に芽生えた「恐怖心」のきっかけ〈3度目春夏連覇へ〉<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

センバツを圧倒的な力で制した大阪桐蔭。3度目の春夏連覇へのスタートを切る

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間淳

間淳Jun Aida

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Nanae Suzuki

確固たる柱がいないなかで、大会新の11本塁打。記録的な猛打でセンバツの頂点に立った大阪桐蔭は過去のチームと何が違うのか。その強さの根源に迫る。Number1049号(2022年4月14日発売)の『大阪桐蔭「“恐怖心”が呼んだ圧勝劇」』より、全文掲載します。

 聖地のグラウンドに大阪桐蔭と近江の選手が並ぶ。わずか2校にだけ許された表彰式。厚い雲に覆われた球場で、選手たちの後方でスコアボードが光を放つ。18-1。準々決勝から3試合連続の2ケタ得点で、大阪桐蔭は4年ぶり4度目となるセンバツの頂点に立った。

 大阪桐蔭は春夏合わせて9度、甲子園で優勝している。2012年と2018年には春夏連覇を成し遂げた。近年の高校野球界で先頭に立つ存在なのは疑いようがない。ただ、今大会の強さは異色だった。隙がない。どんなに優位な状況になっても、どん欲に得点を重ねた。

 準々決勝の市立和歌山戦で象徴的なシーンがあった。8点リードの6回。ノーアウト一、二塁から、初戦の鳴門戦では4番に座ってタイムリーを放っている5番・海老根優大に出されたサインは送りバント。これが内野安打となり、その後の大量得点に繋がった。そして海老根は次の打席でホームランを放つのである。

何度も繰り返した「自分たちは力が足りない」

 彼らが最優先にしているのは、次の1点を奪うために最も確率が高い手段を選択することだ。初回の先制点がプロ注目の3番・松尾汐恩の送りバントで広げたチャンスから生まれたことも、チーム方針の浸透を物語る。

「スコアリングポジションにランナーを置いて1本打つことにこだわっているので、バッターが誰であっても送りバントはします」

 主将の星子天真は、こともなげに試合を振り返っている。

 歴代の大阪桐蔭も強かった。だが、ここまで圧倒的な勝ち方を続けたチームは記憶にない。優勝を決めた後、星子はこう語った。

【次ページ】 “1つ上の代”の敗戦に芽生えた恐怖心

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