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根尾昂18歳が言い聞かせていた“ある言葉”と夜中に掛けた一本の電話「もちろん結果は欲しい。でも、段階があると思うので…」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/10 17:02
1年目の3月、インタビューに応じた根尾
東海圏の岐阜・飛騨の生まれという身内っぽさ、甲子園春夏連覇という勝者のイメージ、両親は医師でオール5に近い成績という文武両道の安心感、このドラフト1位が愛される理由はいくつもあるが、まだ何もしていない新人が背負う期待としてはいささか度を超えている。
根尾「ナナちゃんですか。ええ、僕も聞いて、そんなことあるんだ、と……。正直、高校から来た1年目の選手としては体も技術も、もっと積み重ねていかないといけないと思います。実戦に出させてもらっているのはありがたいですが、やはり積み重ねていくことが大事な時期かな、と。もちろん結果は欲しいです。でも、段階があると思うので……。今、自分はこの段階にいるんだと言い聞かせながらやっています」
眉だけは不変、不動なのだ。
1月下旬に右ふくらはぎを痛めた。
2月の沖縄キャンプは二軍で過ごした。
3月に入って、9日に他より遅れて教育リーグで実戦デビュー。その後、“研修”の意味合いが強いナゴヤドームでの一軍オープン戦出場を経て、二軍の公式戦開幕に至る。そこまで実戦5試合で12打数2安打。世の期待とは裏腹に、どちらかといえばプロの厳しさを思い知らされている。
そんな現状を本人はじつに正確に認識していた。確かに、プロの選手たちの中で見る根尾は思ったより小さく細かった。ただ、なぜだろう。他より華奢に見える背番号7には、どこか芯が通っていると感じさせるものがある。周りの喧騒にも惑わず、自分が階段のどの辺りにいるかを把握していることも理由かもしれないが。
やはり印象的なのは、その眉だ。