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「なぜ宝塚歌劇の町に競馬場がある?」「阪神競馬場には行くけれど…」阪急電車の“ナゾの競馬駅”「仁川駅」には何がある?《宝塚記念》
posted2022/06/26 06:00
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph by
Sankei Shimbun
梅雨時に「宝塚」と聞けば、競馬ファンが思い浮かべることはただひとつだ。1年に一度だけのファンファーレが頭に流れ、あなたの夢はなんですか、私の夢はね、と話に花が咲く。春のGⅠシリーズを締めくくる宝塚記念である。
……と口角泡を飛ばしたところで、一般的に「宝塚」といえば競馬ではなく、むしろ宝塚歌劇団だろう。阪急電鉄のお膝元、歌劇団の聖地、宝塚。地名そのものはずっと古くからのものだが、“宝塚”の字面と響きが歌劇団と阪急の空気感にマッチして、武庫川沿いの谷間に広がるどことなく特別な町のイメージを強くしている。
そして阪急電車の宝塚駅から伸びている宝塚線・今津線のどちらに乗っても、沿線はザ・阪急の静謐な住宅地。「あのエイシンデピュティが勝った宝塚記念さ、生観戦したんだけどさ、絶対メイショウサムソンが勝つと思ったんだよねえ」という競馬ファンの会話とは、相容れないような世界が広がっている(気がする)。
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しかし、宝塚記念というレース名は紛れもなく宝塚市に阪神競馬場があるということから名付けられたものだ。宝塚記念の舞台、阪神競馬場は確かに兵庫県宝塚市にある。最寄り駅は阪急今津線の仁川駅(“にがわ”と読む)。
今津線といえば甲東園のような阪神間を代表する高級住宅地もあり、有川浩の小説『阪急電車』の舞台にもなった穏やかな路線だ。甲東園駅は関西学院大学の最寄り駅で、いつだったか甲東園の町を歩いたときに、おしゃれカフェで育ちの良さそうな関学生男子がコーヒーのうんちくを隣の女子に語っているのを見かけた。今津線とはそういう路線のはずだ。
そんな今津線の沿線、宝塚市内にいささか不釣り合いとも思える競馬場がなぜあるのだろうか。そもそも仁川という最寄り駅の周りは、競馬場以外に何があるのだろうか……かくのごとく、改めて考えてみると阪神競馬場と宝塚、なかなかナゾが多い。
“ナゾの競馬駅”「仁川駅」には何がある?
そんなわけで、ナゾを解き明かすべくまずは仁川駅にやってきた。
阪神競馬場にはもう数え切れないほど足を運んできたし、そのときは決まって仁川駅を利用している。が、仁川駅の改札口を抜けたらそのまま駅前の地下道に入って人波に乗っかってそのまま競馬場に入るのがお決まりだ。なので、まともに仁川駅の周りを歩いたことはほとんど記憶にない。
さてはて、競馬が開催されていない平日の仁川駅はどんな駅なのか。宝塚駅から阪急今津線に乗って10分弱。あっという間に仁川駅に到着した。