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「Jリーグ唯一の女性社長」だった高田春奈氏が味わったクラブ運営の難しさと“生きている実感”「いま振り返ると、すごく苦しかった。でも…」
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寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2022/06/25 11:01
![「Jリーグ唯一の女性社長」だった高田春奈氏が味わったクラブ運営の難しさと“生きている実感”「いま振り返ると、すごく苦しかった。でも…」<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/700/img_76d0ad191161eac1a4b7f098213e64ff436797.jpg)
Jリーグ常勤理事就任にともない、高田春奈氏は2月末にV・ファーレン長崎の社長を退任。サポーターからは感謝のフラッグが多数掲げられた
まっさらな状態からいかにサッカーを学んでいったのか
――異なる業界からJクラブの社長になった高田さんですが、サッカーについてはどんなふうに学んだのでしょうか?
「正直、意識的に勉強したことはなかったんですよ。でも、たとえばアカデミーについてのミーティングで、当時のアカデミーダイレクターだった松田浩(V・ファーレン長崎前監督)さんからいろんな案件を相談してもらったり、そこにある背景を説明していただくなかで、知識を肉付けし、学んでいけたのかなと思います。一緒に試合や練習を見て、プレーを解説していただいたこともありました。
また、Jリーグが進めている『Project DNA』も学びの機会になりました。世界に通用する子どもを育てるための施策なんですが、そのなかに23項目からなる『Jリーグアカデミークオリティースタンダード』という基準があります。4つの段階(1つ星~4つ星)から、クラブはどの段階を目指すのかをリーグに提示するのですが、それを達成するためにどういう人材が必要で、クラブは何をすべきか、という“宿題”を出してくれるんです。明確な基準があるので、サッカーを知らない私でも『こういうところが大事ですね』という会話ができるようになりました」
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――“宿題”のなかには、アカデミーのフィロソフィーを明文化する作業もあったそうですね。
「私が最初に仕事をしたソニーも理念を大事にしている会社でした。父の会社の人事制度を整えるときも、まずは理念。この会社はなんのためにあり、どういう人材が欲しいのかという根本の部分を重視してやってきたので、『あなたたちが目指すサッカーはどういうものなのか』を言語化する作業があったのは、私にとってはとても自然なことでした。松田さんたちと話し合い、長崎の人が持つ県民性や、地域のバックグラウンドを考えながら構築できたのもすごくよかったですね」
――高田さんは2022年3月にJリーグの常勤理事に就任。クラブを離れることになりましたが、名残惜しい気持ちはありませんでしたか?
「最初にお話を頂いたときは、『まだ長崎でやる仕事があるのでは』という気持ちも強くありました。ただ最初にV・ファーレンの社長になると決意した動機として、サッカーを通じて平和について発信したいという思いがあり、それを今度はJリーグというより広い場所でできるのではないか、と感じたんです。長崎での平和活動や地域貢献の経験を活かしながら、広く社会にとって役立つ仕事にチャレンジできる機会は、おそらく二度とないだろうと。そういった理由で、常勤理事というポジションにチャレンジさせていただくことになりました」<#3へ続く>
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