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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥の“最大の難敵”スティーブン・フルトン27歳「俺の身体は大きくなっているから、急いでほしいな」極悪な街で育ったタフな男の井上評
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byL)Getty Images R)Takuya Sugiyama
posted2022/06/24 11:05
スーパーバンタム級で4団体統一を目論むスティーブン・フルトン(左)。ドネア戦の前から井上尚弥を意識するコメントを出している
――あなた自身の話に戻りたいのですが、あなたはフィラデルフィアの治安が悪い界隈の出身として知られています。ボクシングを志した経緯は?
「父親の影響だ。父が2年間入っていた刑務所から出てきて、その後にボクシングをやりたいかを聞かれたんだ。当時は希望していたわけではないんだけど、そんな経緯でやることになった」
――以降、ボクシング以外のことをやろうと思ったことはありますか?
「演技をするのが好きなんだ。今でもいずれ俳優になりたいと思っている。一度、映画に出演が決まりかけたんだけど、バジェットの理由でなくなった。将来はエンターテイナーになりたいんだよ」
――“クールボーイ(格好いい男)・ステフ”という愛称はどこからきたのですか?
「俺の普段の振る舞いからそう呼ばれるようになったんだ。服装も気を遣っているし、普段からクールに振る舞うからそう呼ばれるようになったんだろう。俺にはフィットしたニックネームだと思う。ボクシングスタイルもクールだろ?」
――そうですね(笑)。あなたは経歴、キャラクター的に、タフでエッジが効いた街であるフィラデルフィアを象徴するような選手という印象があります。地元を代表して戦うことはあなたにとっても重要なのでしょうか?
「故郷を代表するのはもちろん大切なことだ。俺という人間には故郷が反映されている。今のフィラデルフィアからは多くの才能あるボクサーが出てきている。ボクシングに限らず、映画、音楽、俳優、バスケットボール、フットボール、野球、アイスホッケー……どんな業界もフィリー出身のタレントで満たされている。これから先はフィラデルフィアにとって素晴らしい時代になるよ。より若い世代に好影響を与えていきたいという気持ちは持っている」
「刑務所からもう何年も戻ってこれない奴もいる」
――古くはジョー・フレイジャー、近年ではホプキンスまで多くの偉大な選手が生まれてきましたが、いわゆる“フィラデルフィア・ファイター”をどう定義しますか?
「例外なく、誰もが強いハートを持っている。ラフに戦うという意味ではなく、聡明さと勇敢さを持って戦うことができるボクサーたちだということだ」
――その中でも、先ほども話した通り、あなたは危険な地域で育ち、ハードな少年時代を過ごしたことでも知られています。そんな場所からでも這い上がれることを示したいという気持ちもありますか?
「故郷から抜け出すことができなかった仲間はたくさんいる。死んでしまったものもいるし、刑務所からもう何年も戻ってこれない奴もいる。そんな場所の人たちに、何かをやり遂げることができると示したいし、成功することで彼らを勇気付けられるなら素晴らしいと思っているよ」