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「ラグビーは大好き。でもラグビー界は好きじゃない」畠山健介はなぜ軋轢を恐れず発言してきたのか…今後は“スクラムの調律師”に?
posted2022/06/22 11:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
ワールドカップの熱狂を受けて開幕した2015年のトップリーグ。
開幕戦のパナソニックとサントリーの試合には、秩父宮ラグビー場に1万人以上が足を運んだとはいえ、ワールドカップの舞台に立った後だったからこそ、空席がより目立ってしまったのかもしれない。畠山健介は思った。
「ラグビーで自分を表現できるようになって、命がけでやってるという意識がありました。ラグビーの世界に入ったら一生、食いっぱぐれのない世界にしようと思ってたのに、これじゃ……と感じてしまったんです。正直、『勝ってもあまり意味がないのかな』とさえ思ったほどです」
その後、畠山は選手会の会長を務めるなど、労働環境や条件の改善、向上などにも携わってきた。SNS上でも自分の意見を隠さず、それが軋轢を生むこともあった。
「良くしたいという思いは、角度を変えれば批判という形に聞こえることもあります。現状維持が好ましいと考える人もいますから、僕の発言はそういう立場の人たちには、ネガティブなものと捉えられることもありました。正直、内発的な変化は期待できない、とも感じました」
ラグビー界はもっと可視化した方がいい
どうすれば選手たちに自分と同じ虚無感を感じさせずに、プレーすることで報われる世界を作れるのか。
それには試合の質を高めるだけでなく、周辺の環境を整備していく必要があると畠山は危機感を募らせる。
「日本のラグビー界はいろいろなことを可視化した方がいいと思っています。チームの事業費、選手の契約も、プロ、社員、外国人、嘱託、個人事業主といった様々な形態が混在しています。お金についても、プロ野球、サッカーの選手は年俸が分かりますよね。でも、ラグビー選手は分からない。それでは若い世代や親御さんにとって職業選択の時点で弾かれてしまいます。怪我などのリスクに対してリターンを示せないからです」