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「イノウエが1位に上がることになった。まだ公にしないでほしい」米リング誌のPFP選定委員が明かす、井上尚弥に“最後の一票”が入った理由 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/06/17 17:05

「イノウエが1位に上がることになった。まだ公にしないでほしい」米リング誌のPFP選定委員が明かす、井上尚弥に“最後の一票”が入った理由<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

最も権威があると言われる米リングマガジンのPFPランキングで1位になった井上尚弥。選定委員の1人である筆者が、最後まで意見が割れた舞台裏を明かした

 こういった流れから推察いただける通り、リングマガジンのPFPは各国ジャーナリストによって形成されたパネリストの投票による単なるポイント計算ではなく、オンライン上で議論がなされた上で決定される。チェーンメールで意見交換が行われ、中には他のパネリストの主張を聞いた上で順位を変えるものもいる。このように民主主義的なやり方で決定される点で、一斉投票のポイント計算か、特定の編集者の独断で決められる他媒体のランキングとは一線を画している。

 リングマガジンと同じく注目を集めることの多いPFPとして、ESPN.comのそれが挙げられる。ESPNは選定委員の数が15人と多く、ティモシー・ブラッドリー、アンドレ・ウォード(ともにアメリカ)のような元世界チャンピオン、テディ・アトラス(アメリカ)のような著名なトレーナーも含まれており、一見すると大きな価値があるように思える。

 ただ、正直、ESPNのパネリストの全員が毎週、世界各国で行われる試合の多くに実際に目を通しているかは極めて怪しい。リングマガジンのPFP選定には12人のパネリストが名を連ねているが、週によって全員が意見を述べるわけではない。筆者も諸事情で準備が整っていないと感じた週は投票しないこともある。あくまで“実”を重視するこのようなランキング選定方法も、リングマガジンのPFPの価値が高く評価され、“最も権威がある”と見られている一因なのだろう。

当初は「ウシクが1位」と考えていたが…

 ここで私自身の選考過程を説明しておくと、今回はかなり頭を悩ませたのは紛れもない事実だ。責任あるパネリストとして公平でなければならない。もちろん同国人の井上に忖度すべきではなく、どのような順位を推すにしても明確な見解が求められる。

 ウシクは直近10戦中9戦を敵地で勝ち抜き、クルーザー、ヘビー級を制した“史上最高のロードウォリアー”。興行的な“Aサイド”が圧倒的に優位なボクシングの常識を覆すような存在であり、井上がドネアを蹴散らした直後も、当初は私もウシクが1位を守るべきではないかと考えていた。

 ただ、その後に熟考し、ウシクと井上の戦歴を見比べる過程で、井上のキャリアも最高級のリスペクトに値するものだと改めて気付かされた。

井上尚弥が自身のTwitterでピックアップしたNumberカメラマンの一枚「あれだけ必死こいてトレーニングしたんだもんな。。背筋も喜んでるわ。」©Takuya Sugiyama井上尚弥が自身のTwitterでピックアップしたNumberカメラマンの一枚「あれだけ必死こいてトレーニングしたんだもんな。。背筋も喜んでるわ。」©Takuya Sugiyama

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