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「日本ハムでやっていた時とは違うんだぞ」プロ野球史上初の快挙を逃した37歳増井浩俊に響く、オリックス中嶋監督の“親心” 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2022/06/14 18:20

「日本ハムでやっていた時とは違うんだぞ」プロ野球史上初の快挙を逃した37歳増井浩俊に響く、オリックス中嶋監督の“親心”<Number Web> photograph by KYODO

ヤクルト内山に先制の二塁打を浴びて悔しそうな表情を浮かべるオリックス増井

 増井は今年2月のキャンプ中に右肘の違和感を覚えて別メニュー調整となり、開幕後もなかなか調子が上がらず、5月25日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦では初回に6失点していた。

 そんな時、小林宏二軍監督を通じて、中嶋聡監督から助言が届いた。

「キャッチャーの言う通りに投げるだけじゃなく、自分の意志を持って投げろ。自分の投げたい球は何なのか、この球はどこからどう曲げたい、どう落としたい、という考えをしっかり持って投球するように」

 日本ハム時代に、現役だった中嶋監督とバッテリーを組んだこともある増井はハッとした。

「あの頃は中嶋さんだったり鶴岡(慎也)さんだったり、経験豊富なキャッチャーの方と組んでいたので、そのリードに従っていればよかった。でも今はどうしても、自分より経験の浅いキャッチャーと組むことになる。もちろん若い子達もしっかり考えてリードしてくれるんですけど、『お前のほうが経験があるんだから、ちゃんとお前の経験を活かして投げろ。日本ハムでやっていた時とは違うんだぞ』と言われました」

 その直後の6月1日のウエスタン・リーグ、広島戦で4回1失点の好投を見せた。それが最終テストだったのかもしれない。中嶋監督からは、「よかったじゃないか。それを次も(一軍で)やってみろ」と伝えられた。

「勝たせてあげられなくてごめん」

 増井は昨年も交流戦のヤクルト戦に先発し、5回2失点で勝利投手の権利を持ってマウンドを降りたが、リリーフ陣が逆転を許し、偉業達成を逃していた。

 中嶋監督には、今年こそ記録を達成させてやりたいという親心があったのだろう。しかし5月までは増井の状態がなかなか安定しなかった。記録がかかっているとはいえ勝利が最優先。状態の上がらない投手を一軍に上げるわけにはいかない。

 だが、中嶋監督からのメッセージを汲み取った増井は、ヤクルト戦前の最後の登板で結果を出し、記録への挑戦権をつかんだ。

 結果的に、今年も5回2失点でしのいだが、援護は1点のみで敗戦投手となった。試合後、中嶋監督は増井を呼んで言った。

「点取れずに申し訳ない。勝たせてあげられなくてごめん」

 増井は、「本当にありがたいですね」と噛みしめるように言う。

【次ページ】 記録は「もう、あまり意識していません」

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