一本勝ちへのこだわり…実力の「再証明」

　このトーナメントでは、KO、一本で勝つことにもこだわった。誰と闘ってもいいというつもりでいたが、決勝で当たった杉山とはいつか闘うし、勝たなければいけない相手だと考えていた。以前、対戦が流れたこともある杉山とは、ともに日本の女子MMAにおける重い階級を支えてきた。

「今日で一つ、大きなカードを終えたなという感じですね」

　そう語ったのはDEEP代表の佐伯繁だ。そういう試合に中井は勝った。実力を「再証明」することが宇佐美と中井のテーマだった。

「自分たちとしては、当たり前に一番強いと思ってるんですけど。でもそう思ってない人もいるのかなと」（宇佐美）

「JEWELSに恩返しがしたい」

　これまでだって、試合内容も結果も申し分なかった。ただ計量やブログなどでのコスプレが話題になることも多く、正統派の実力者として見られてきたとは言い切れない。

　試合の機会がなかなか訪れず、ファンに寄付を募ったこともある。練習相手の募集もネットで公開した。

　もしかしたら、しなくて済む苦労もあったかもしれない。気がつけばキャリア16年、35歳になっていた。それでも3本のベルトを巻いて、もうUFCしか見えないというところまできた。

「競技の向上、発展も含めてどれだけできるか。JEWELSに恩返しがしたい」

　それが、UFCに出場して“世界”と闘い、勝つことの意味なのだ。佐伯代表も、これほどの存在を日本に留めておくつもりはない。

「（チャンピオンでも）縛りはしないです。UFCに行ってほしいし、バックアップします」

　チャンスがいつ来るかは分からない。ただ、来た時にすぐ掴めるだけの力が中井にはある。それは間違いない。

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