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《独占》「リカは再び3アクセルを跳ぶでしょう」ブライアン・オーサーが語る紀平梨花への期待…五輪で羽生結弦について“無言を貫いた”理由は
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田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura/Getty Images
posted2022/05/12 17:02
紀平梨花、羽生結弦らを指導するブライアン・オーサーコーチが独占インタビューに応じた
「シニア年齢引き上げ」に100%賛成と語る“重要な理由”
6月のISU総会では、シニアに上がる最低年齢が15歳から17歳に引き上げられる可能性が大きい。特に女子に、どのような変化をもたらすだろうか。
「私はその変化は100%サポートします。難しいジャンプをやってきた女子に対して、ネガティブなことを言うつもりはありません。でも過去数年の女子競技は、誰がもっともうまくゲームに勝つかという闘いでした。どこにどのようなジャンプを入れて、ポイントを稼いで、4回転をやって。その一方で、美を表現するという女子のフィギュアスケートの本質が失われていった部分もあったと思う」
次々と入れ替わるティーネイジャーのチャンピオンたちを、一般社会はどのくらいフォローしているのか疑問だという。
「私はスケート業界にいる人間なのに、このところ女子の新チャンピオンはいちいち名前を覚えきれなくて、イニシャルで呼んでいたほどでした。年齢制限が引き上げられたら、かつてのドロシー・ハミル、ペギー・フレミング、ロザリン・サムナーズ、カタリナ・ビット、そしてカロリナ・コストナーやキム・ヨナのように記憶に残る選手が、再び出て来ることが可能になるかもしれません。男子は元々、息の長い活動を続けるトップ選手が多かった。ハビエル(・フェルナンデス)もユヅもシニアに上がって10年も活動をして、人々の記憶に刻まれる選手になりました。こうした人々の記憶に残る選手が、女子にも必要なのです。元々女子がフィギュアスケートのハイライトと言われていたのですから」
北京オリンピックについて「とても難しい問題だけれど…」
北京オリンピックの女子については、どんな感想を持ったのだろうか。
「私は男子が終了してから間もなくカナダに戻ったので、女子は最後まで見ていないんです。ただ団体戦の表彰式がキャンセルされて、ワリエワが陽性になったという噂が流れた時はまだ現地にいました」
とても難しい問題だけれど、と何度も繰り返しながらオーサーはこう続けた。
「ロシアの女の子たちは、禁止ドラッグなしでも4回転を跳べていたのかもしれない。今わかっているのは、一人陽性判定が出たこと。あとは推測にすぎないのでコメントはしません。ただ私は昔ながらの、ひたすら努力あるのみというスタイルのコーチです。ロシア女子たちが大技をどんどんマスターし、私は自分の生徒の父兄から、なぜ私の生徒たちはロシア人のように大技ができないのだと責められたこともありました。でもこれで、言い訳しなくても良くなったということはあります」とちょっと苦笑いした。