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「舞華は大嫌いな存在だった。でも…」スターダム“白いベルトの不死鳥”上谷沙弥がフェニックス封印を断固阻止「私からは何も奪えない」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/05/11 17:01
「白いベルト」ことワンダー・オブ・スターダム王座を保持する上谷沙弥の入場シーン。抜群の身体能力と激しい戦いぶりでファンを魅了している
地元で敗れた舞華は「死ぬまで忘れない」
この日、上谷のピンチに館内からは驚きの声が上がった。場外でフランケンシュタイナーに行こうとした上谷を、逆にパワーボムのような体勢で持ち上げた舞華は、エプロンの角に思いきり背中から叩きつけた。上谷がそのまま立ち上がれないのではないか、と心配になるくらい強烈なものだった。だが、上谷はどうにかリングに戻ると、何事もなかったかのように試合を続けた。
両者の意地と執念が感じられる試合だった。
舞華の柔道技が上谷を襲う。それでも上谷は起き上がり、舞華に向かっていった。
最後は前方回転のファイヤーバード・スプラッシュからフェニックス・スプラッシュという黄金コースだった。「封印なんかしてたまるものか」という意志が上谷から伝わってきた。
「私からは何も奪い取ることはできない」
試合後、消耗しきった舞華はイスにもたれていた。
「たぶん、上谷の方が上だった。それを実感させられました。この福岡、たくさんの人に支えられて生きてきたこの地で勝てなかったことは、この先、死ぬまで忘れることはないでしょう。ただ次は、必ずシングルのベルトを取って帰ってくるけん。みんな、待っとってね」
一方の上谷は、あれだけの試合をしたのに元気だった。もちろん、勝ったことで気持ちの上での違いがあるのだろうけれど。
「舞華ね。スターダムに来て、すぐフューチャーのベルト巻いて、めちゃくちゃ気に食わなくて大嫌いな存在だった。でも、ここまでやり合って、本当にかけがえのない存在になった。私のプロレスラー人生にとって大切な存在になりました。舞華はずっと私のライバルです。私の今の全力、伝わってますか」