ラウンドガールの仕事から筋トレに熱中

　慶應大学を卒業して芸能事務所に所属した才木は、アイドルユニットCheer1のメンバーに。Cheer1が武藤敬司の団体WRESTLE-1の公式サポーターを務めたことでプロレスを知った。大会のオープニングパフォーマンスを担当し、K-1系の立ち技格闘技イベントKrushのラウンドガールも。実はプロレスデビュー前から“聖地”後楽園ホールのリングに上がっていたわけだ。

「興味を持ったら何でもやってみたいし、新しいことを始めるのに躊躇しないタイプ」だという才木。K-1のアマチュア大会に出たこともある。筋トレを始めたのはラウンドガールの仕事がきっかけだった。腹筋が割れていたらカッコいいだろうとトレーニングを始めると、すぐにのめり込んだ。

2015年、ラウンドガールを務めながらK-1アマチュア大会に出場。トレーニングにのめり込んでいった　©Norihiro Hashimoto

　なんでもしっかり結果を出すまでやりたいという性格。筋トレは受験と似ていて、コツコツと努力を積み重ねることが結果につながる。そんなところも好きだった。

　2015年、WRESTLE-1が選手育成スクール「プロレス総合学院」をオープンすると1期生に。

「Cheer1でプロレスを知って、自分でもやってみたくなったけどケガするかもしれないし、そもそも私がプロレスラーになれるものなのか。凄く悩んで、事務所の社長にも相談しました」

「私の筋肉はプロレス界でも通用するんだ」

　それでも、1期生の中で数少ない最終テスト合格者となり、2016年3月にレスラーデビュー。舞台は学院の卒業試合だった。対戦したのは同じ1期生の木村花だ。“授業”で教えを受けたのは近藤修司ら、当時WRESTLE-1に所属していた男子選手たち。「技とか間とか、私は見るのもやるのも男子のプロレスがベースなんです」と才木は言う。師匠に当たるのが誰かといえば、やはり武藤敬司になる。

　目指したのは「動けるパワーファイター」だ。得意技は『キン肉マン』のロビンマスクにあやかったタワーブリッジ（アルゼンチン・バックブリーカー）に武藤公認のシャイニング・ウィザード。ジャックハマー（変型ブレーンバスター）も豪快だった。

「嬉しかったのは、プロレスラーとしても“筋肉が凄い”と言ってもらえたことです。私の筋肉はプロレス界でも通用するんだって。自信になりました」

　2019年1月に対戦した“女子プロレス界の横綱”里村明衣子は、試合前の会見で才木を「何から何までプロ」と絶賛している。

「筋肉アイドルと謳うには努力が必要ですから。筋肉は1カ月とか半年でつくものじゃない。女性としてこの体を作るには本物の努力が必要。惹かれるものがありました」（里村）

対戦した“女子プロレス界の横綱”里村明衣子には肉体とプロとしての姿勢を絶賛された　©Norihiro Hashimoto

巻いたベルトは3本…それでも悔しかった

　主戦場の東京女子プロレスで2017年にシングル王座、2018年にはタッグ王座を獲得した。東京女子は今年、両国国技館に進出した女子プロレス界トップクラスの人気団体だ。才木はそんな団体が軌道に乗った、いわば“躍進期”の主力レスラーだった。

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