濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「リングを降りたら素でいたい」 元アイドルはパワーファイターに…スターダム・ひめかが“ネガティブな自分”もさらけ出す理由《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byYuki Suenaga
posted2022/04/28 17:02
4月29日、スターダム最高峰のベルトに挑戦するひめか
「リングを降りたら素でいたい。可愛い自撮りも載せたい」
美意識はレスラーとしての野望から生まれるものでもあるようだ。スターダムでは、大げさでなく全員がトップの座を狙っているのだとひめかは言う。
「団体によっては、ベルトを巻いてる、巻いてないに関係なく“この人がエース”、“不動のトップはこの選手”というのがありますよね。スターダムはそれがない。みんながスターダムの看板を背負っている自覚があって。“主役になりたい”じゃなく“私が主役です”って全員思ってる」
選手がキラキラしていて、同時にギラギラもしている。それがスターダムだ。ひめかも埋もれないように気を張っていた。常に強くなくてはいけないと。
「特にDDMは体も心も強い選手の集団ですから。DDMらしさは意識してました。泣かないし、あんまり笑いもしない。でも実際の私は、体が大きいのに気がちっちゃい(笑)。すぐ落ち込むし、病むし、引きこもりがちだし。今はそういう自分を見せてもいいのかなと思ってますね。普段はネガティブなところもある女の子。“こんな子がプロレスなんてできるの?”っていうような。なのにリングに上がったら自分でも分からないようなスイッチが入る。そういうところが面白いと思うんですよ、プロレスって。
たぶん私の素の人間性を知れば知るほど身近に感じてもらえると思います。だからスターダムの選手がよくやる“SNSプロレス”、ツイッターで挑発したりっていうのは最低限でいいかなって。リングを降りたら素でいたいですね。可愛い自撮りも載せたいし(笑)」
「間違いなく、キャリア最大の分岐点です」
本来の性格でいえば「センター向きではないです」。けれどリングではそうも言っていられない。
「スターダムに来てタッグ、6人タッグのベルトを巻いて、ユニットに貢献しようという気持ちが強かったですね。でも一緒にベルトを巻いているなつぽいと舞華は、チームで活躍しながら個人の野望もアピールしてるんですよ。それができてないのは私だけだった。ある人から“去年は試合してないもんね”と言われて、それが凄いショックでした」
確かに、腰を痛めて3カ月の欠場期間はあった。だがタッグベルトを日本武道館大会で防衛し、春のトーナメントはベスト4。夏のリーグ戦、秋のタッグリーグも全公式戦に出場している。それでも、人によっては試合を見たという印象が薄かったのだ。
「そうなってしまった理由は、自分を出してなかったからですよね。チームプレーをしながら、1人で目立つことも大事なんだなって。やっぱりプロレスラーは待ってるだけじゃダメで、がめつさもないと」
だから、最高峰のタイトル挑戦という行動に出た。スターダム入りして2年弱、実はシングル王座挑戦はこれが2度目でしかない。“赤いベルト”挑戦は初。元アイドルでもDDMの一員でもなく、初めて“個”としてのひめかが真価を問われる。「間違いなく、キャリア最大の分岐点です」と本人も言う。
「ベルトを狙うだけじゃなく、何かを残さなきゃいけない」