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「今のプロレスは危険すぎる」批判は本当に適切か? 大谷晋二郎“頚髄損傷のリング事故”を至近距離で見た筆者が明かすリアルと“選手の証言”

posted2022/04/16 11:00

 
「今のプロレスは危険すぎる」批判は本当に適切か? 大谷晋二郎“頚髄損傷のリング事故”を至近距離で見た筆者が明かすリアルと“選手の証言”<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

4月10日のZERO1両国国技館大会で対戦した大谷晋二郎(左)と杉浦貴。試合中盤に大谷が負傷し、救急搬送された

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 多くのファンに愛されるベテラン、大谷晋二郎が自分の目の前で倒れた。そしてそのまま動けなくなってしまった。

 4月10日のZERO1両国国技館大会。旗揚げ20&21周年を記念するビッグマッチだ。旗揚げメンバーとして団体の屋台骨を支えてきた大谷は、メインイベントでプロレスリング・ノアの杉浦貴が持つ世界ヘビー級王座に挑んだ。ZERO1の“至宝”と言うべきベルトを取り戻すための闘いだった。

救急搬送で頚髄損傷と診断

 試合の結末については、ご存知の方のほうが多いだろう。大谷はコーナーに向けてのジャーマン・スープレックスを受け、レフェリーストップで敗れた。試合後も手足が動かず救急搬送。頚髄損傷と診断され、13日に今後の悪化を予防するための手術を受けた。手術前、ICUでの大谷は家族や医者と話ができる状態だったという。

 団体の発表によると、執刀医からは「予定通りの処置はできました。順調です」との報告があり、次のステップとなる治療のために転院したそうだ。

 試合展開自体は、タイトルマッチらしいものだった。序盤は大谷が長時間にわたりヘッドロックで絞り上げる。杉浦は徹底した腕攻め。派手な技に頼らない、実力者同士ならではの前半戦とも言えた。そこから大谷が得意の「顔面ウォッシュ」を決め、エルボーの打ち合い。大谷はあえて胸を突き出し、相手に突っ込むことで杉浦の打撃に対抗していく。

動かない大谷…「まだ終わってない、立ってこい」

 コーナーへのジャーマンが放たれたのは、いよいよ攻防がクライマックスを迎えようかという、その矢先だった。投げられた大谷は、コーナーマットの下部からサードロープにかけて頭を打ち付けたように見えた。投げられた直後、頭がコーナーの外に出ていた。首が前方にかなりの角度で曲がってしまったのではないか。

 杉浦の普段の試合ぶりから考えても、これでフィニッシュしようという攻撃ではなかった。コーナーに投げる技は極端に珍しいというわけでもない。この技は「ターンバックル・ジャーマン」とも呼ばれる。ターンバックルとはロープを支える金具のことだ。だからSNSでその言葉だけを見て大谷が金具そのものに頭を打ったと思った人もいるかもしれない。だが実際にはマットの部分だ。

 それでもダメージは大きい。なかなか大谷が立ってこない。杉浦が近寄って声を飛ばす。確か「まだ終わってない、立ってこい」、そんなことを言っていた記憶がある。

 杉浦のセコンドを務めた鈴木秀樹は、レフェリーにダウンカウントを要求した。激しい口調だった。様子を見るのではなく、あくまでルール通りに試合を進めろということだ。競技として真っ当な訴えだし、大谷に“異変”があったとしても、テンカウントを数えればスムーズに試合は終わる。それだけ早く治療などの対処もできる。

【次ページ】 試合はストップ、“声援NG”でも観客からは大谷コール

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