「もしアイスリボンがピンチの時は助けに来てね」

「いつかきっと。それは今なんだ」

　そんな言葉とともに、志田は3.20アイスリボン参戦を表明した。「いつかきっと」とは、2人が出演した映画『スリーカウント』の主題歌であり、歌ったのは彼女たちも属するユニット・マッスルビーナスだ。マッスルビーナスは、リング上でのチーム名でもある。

「もしアイスリボンがピンチの時は助けに来てね」

　藤本はマッスルビーナス最後の試合で、そう伝えていた。志田は約束を守った。昨年末の選手大量離脱を知り、一時帰国中の古巣参戦を決めた。AEW入りする前、フリーとしてアイスリボンに参戦した際は後輩に立ち塞がる“外敵”といった立場だったが、今回は違った。

「つっか（藤本のニックネーム）大丈夫かな、つっかは大変な思いしてるんだろうな。その隣にいたいなと。個人的な、職権濫用のような気持ちで来ました」（志田）

古巣の選手大量離脱を知り、参戦を決意したという志田

みんなが見たかった「魂のスリーカウント」

　8年ぶりのマッスルビーナス結成。入場曲は「いつかきっと」。音源の中の歌声は初々しいが、ゲートから現れた2人は自信と貫禄に満ちていた。簡単に言うと“オーラ”がケタ違いなのだ。

　志田はフリーとして生き抜き、AEWに入ってベルトを巻いた。藤本はその間、アイスリボンの顔として団体を守り続けた。その経験がもたらす自信であり貫禄だった。

　志田はリングインすると、この日で引退となる旧知の斉藤一二三レフェリーにハグ。それだけ余裕があり、“里帰り”を味わうことができていたのだろう。

リングインすると、この日で引退となる斉藤一二三レフェリーとハグ

　対戦したのは星ハム子＆真琴。ハム子は藤本、志田と同年デビューで、フリーの真琴もアイスリボン出身だ。“同窓会マッチ”でもあるだけに最初から雰囲気がいい。志田は「ただいま」、藤本は「おかえり」の文字をアレンジしたフェイスペイントを施していた。

　明るく華やかで親密。そんな空気の中で、マッスルビーナスは抜群のチームワークを見せた。試合後に「ドンピシャだったね」と声を揃えたダブル・ミサイルキック。志田が藤本の体を跳ね上げてのドロップキックも完璧なタイミングだった。両者ダウンのピンチには、互いの目を見て肩を組んで立ち上がる。志田がアシストしての藤本の必殺技・ビーナスシュートもヒットした。

2人でコーナーに上ると…

息の合ったダブル・ミサイルキック。試合後には「ドンピシャだった」と振り返った

　最後は志田がランニングニー「魂のスリーカウント」をハム子に決めた。みんなが見たかったフィニッシュと言っていいだろう。もちろんハム子と真琴には悔しさがあったはずだが、この日に関しては仕方がないとしか言えない。そういう試合だったし、マッスルビーナスの輝きが圧倒的だった。セコンドについた若手のホープ・朝陽はこんな感想を聞かせてくれた。

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