濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“設立以来の危機”アイスリボンに米メジャーから参戦の志田光がもたらすものは? 同期・藤本つかさとの友情「ピンチの時は助けに来てね」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/04/03 11:00
3.20後楽園ホール大会にてアイスリボン久々の参戦となった志田光(右)と、同期で選手代表も務める藤本つかさ
朝陽「ちょっと寂しくもありました」
「自分もファンだったので感動しました。藤本さん、“実家”にいるみたいな感じでしたね。普段とは違うなって。普段は後輩の面倒を見る立場じゃないですか。同期と組んだらこんな感じなのか、本当はこういう試合がしたいのかなって思ったら、ちょっと寂しくもありました」
後輩が見て寂しくなるほど、マッスルビーナスでの藤本はイキイキとしていたのだ。試合後、藤本はあらためてファンに向かって「復帰前提の無期限休業」を報告した。
志田の試合後の第一声は「日本の女子プロレス、おもしれー! アイスリボン、おもしれー!」だった。さらに「私はここ(アイスリボン)に未来を見せにきました」とも。藤本の要請を受け、5.4横浜大会への出場も決まった。つまり“志田光、アイスリボンに継続参戦”である。
志田とのタッグについて、藤本は「マッスルビーナス再結成ではなく、新生マッスルビーナス始動」と語っていた。“先”を見据えたものだということだ。マッチメイクも同じ。
今回は“同窓会マッチ”になったが、アイスリボンの現状を考えれば若手チームを相手にするという対戦カードでもよかったはず。“志田光と闘う”という経験を積ませ、次世代の主力選手を育てるという方向性だ。
大会前日、藤本にそれを聞いてみる。もちろん彼女も分かっていた。今回それをしなかった理由もはっきりしていた。
「これが最後じゃないと思っているので」
「つっかの休業は、団体としては大きな転機」
志田の参戦、マッスルビーナスとしての試合はこれからもある。若手が志田と闘う機会も。そう考えてのマッチメイクだったのだ。藤本と組みハム子、真琴と試合をして、懐かしさもあってリング上で自然と顔が緩んだと志田。それだけ肩の力を抜いて、力が発揮しやすい顔ぶれだった。よく知っているからこそ「負けてられない」という気持ちも出てきた。
「初めて見る人にも、マッスルビーナスが女子プロレス界最高のタッグだっていうことを見せにきたので」
インタビュースペースで志田は言った。そしてこう続ける。
「つっかの休業は、団体としては大きな転機だと思う。でもプロレスにはその後の未来がある。つっかが抜けたら誰が頑張るんだろうっていう。つっかだって休業が終わりじゃないですから。
私は未来を味わいたくて来ましたし、マッスルビーナスも過去を振り返るためではなく、未来を見せるために組みました。大変な時期だとは思いますけど、未来の希望を体現しながら、私は日本でももっとプロレスをしていきます」