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KAIRIの鼓膜が破れ、スターライト・キッドも流血…「痛みがうれしいね」スターダム“両国国技館の激闘”で2人は何を伝え合ったのか?
posted2022/04/02 17:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
KAIRIはコーナーからの高いエルボーを放つと「カヴァー!」と叫んでスターライト・キッドを押さえ込んだ。
3月27日、スターダムの両国国技館大会。KAIRIは前日には岩谷麻優とタッグを組んで中野たむ、ウナギ・サヤカ組と戦い、約5年ぶりのスターダム復帰を果たした。裏拳やタックルもスピーディーで好調さがうかがえた。2日目はキッドとのシングルマッチだった。なんだか、新鮮なワクワク感があった。
この試合の後に、白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)と赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)の王座戦がふたつ残っていたが、筆者としてはこちらの方が注目度が高かった。大会ポスターもKAIRIのものと朱里らのもの、2種類が用意されていた。
スターダムのエグゼクティブ・プロデューサーであるロッシー小川を含めて、それだけKAIRIへの期待度は大きかった。
試合中に鼓膜が破れていたKAIRI
以前、KAIRIがスターダムのリングで「宝城カイリ」として紫雷イオらと戦っていた頃のキッドから、今のキッドの姿を想像することはかなり難しいだろう。キッドは、ただ、“闇に墜ちた虎”に変わっただけではない。
そこには見た目以上に、急激に成長したキッドがいた。そしてWWE帰りのKAIRIには、落ち着きと風格が宿っていた。
時間は人を変える。
敗北後、起き上がったキッドは、KAIRIが差し出した右手を払ったが、代わりに自ら左手を出した。KAIRIはその手を取ると、キッドを引き寄せて抱きしめた。その時間が短かったのか、長かったのかは感覚の世界だろう。
キッドは強くKAIRIを突き放して、右腕を蹴り上げた。それでもKAIRIはやさしい笑顔を見せた。
痛む右腕に加えて、KAIRIの左耳の鼓膜は試合中に破れていた。