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「大阪桐蔭の弱点」が浮き彫りに…!? “対外試合ゼロ”の公立校・鳴門エースを西谷監督が最警戒していたワケ「勝って番狂わせを起こそう!」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/03/26 17:03
大阪桐蔭相手に互角の試合を見せた鳴門。エース冨田の投球が優勝候補の弱点を露呈させた
3回に先頭の鈴木塁のヒットから先制点を許す。なおもピンチで4番の海老根優大に外角ストレートを右中間に運ばれ2点目を献上したことについて、冨田は「内角を攻めようと思ったが、コースが甘くなった」と悔いたが、それだけだった。
右バッターのヒットは、この回の2本のみ。次の打席以降、内角のひざ元に鋭く曲がるスライダーで連続三振に打ち取られた海老根は、「なかなか狙い球を絞れず、ちょっとてこずった」と、苦心を漏らしていたほどである。
海老根が脱帽した冨田のスライダーは、右バッターの泣き所だった。そのなかでも、最も翻弄できたのが松尾だった。内角高めのストレートと内角低めのスライダーのコンビネーションが冴え、4打席で無安打、1四球と封じ込めた。
「まだまだ力不足です」
松尾の短い言葉に、冨田の凄味が凝縮されているようだった。
8回を投げ8安打、8奪三振、3失点。監督の森脇とバッテリーが「甘い球は確実に仕留められた」と、左バッターへの6安打など相手の底力を痛感しながらも、力が未知数だったチームは優勝候補と互角に渡り合った。
「攻めの守り」が露呈させた大阪桐蔭の弱点
それは、試合前から警戒していた西谷の試合後の言葉が何よりの証左である。
「ガンガン点を取れれば楽なんでしょうが、とにかくロースコアで、と。スクイズでも何でもいいから点を取ろうということで、一本勝ちではなく寝技に持ち込んで、判定勝ちでもいいという気持ちでした」
重量級を相手に寝技に持ち込んだ功労者は、強気の「攻めの守り」を貫いたバッテリーだ。
冨田が頷き、自らの投球を誇る。
「全国の優勝候補を相手に、最後まで投げられたのは自信になりました」
今年初実戦ながらも、「右バッター封じ」で大阪桐蔭の綻びを露呈させただけでも、鳴門の敗戦には大きな意味があった。
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