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210cm牧大晃18歳が熟考して決めた「大学入学前にVリーグ」バレー界の“暗黙の了解”に踏み込んだパナソニックの一歩 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNoriko Yonemushi

posted2022/03/11 11:01

210cm牧大晃18歳が熟考して決めた「大学入学前にVリーグ」バレー界の“暗黙の了解”に踏み込んだパナソニックの一歩<Number Web> photograph by Noriko Yonemushi

2月にパナソニックパンサーズに加入した牧大晃。4月からは筑波大にも進学する

 日本選手最長身で、なおかつ身のこなしが柔らかく、サーブレシーブもこなす18歳。そんな同年代の中では飛び抜けた存在でも、パナソニックに入れば、日々スピードやスキル、ジャンプ力など足りないものを痛感させられる。もともと牧自身も課題と捉えていたが、同年代の中だけでプレーしていたらそこまで痛切には感じなかったかもしれない。

 210cmの牧でも、パナソニックではブロックの高さに苦しむ。

「ブロックに触られるので嫌ですね。特に(身長200cmを超える)大竹(壱青)さんと山内(晶大)さんの2人が並んだ時はもう、『終わりやな』って思います(苦笑)」

 改めてジャンプ力向上の必要性を痛感した。今も最高到達点は350cmあるが、目標は高い。

「370cm以上になれば、いいほうかなと思います。高校に入ってから17cm伸びたので、これからもっとしっかりトレーニングをしていけばたぶん20cmぐらい伸ばせると思う。それぐらいを目指して頑張りたいです」

 Vリーグでも、最高到達点が370cm以上なのは、身長218cmのムセルスキー・ドミトリー(サントリーサンバーズ)など外国人選手4人だけ。目の前のシャイな18歳が、訥々と、とてつもないスケールの話をしていることに、驚くと同時にニヤついてしまう。

 その目標を聞いたティリ監督は目を丸くし、「ナイス!高い目標があるとそこに向かって必死に頑張れるので、そう言ってくれるのは非常に嬉しい」と喜んだ。

 世界を見渡しても210cm以上のアウトサイドは滅多にいない。ティリ監督も「(他に)1人しか知らない」と言う。だが、だからといって特別扱いはしない。牧には「足を動かせ」と口酸っぱく言っている。

「アウトサイドの選手は、1mぐらい跳べて、動きが速くなければいけない。今のバレーはスピードが重要。牧は非常に身長が高く、その割にはサーブレシーブもトスもうまいし、スパイクもいい。サーブ力もあるし、ブロックももちろん相手のプレッシャーになる。ただ他の選手に比べると遅いので、すべてのプレーにおいて動きを速くできるように強化したい」

筑波大進学も諦めたくなかった

 高い目標を抱く若手選手が、早い段階で高いレベルの環境、指導に触れるための選択肢が増えたことは喜ばしい。

 もともと牧は、高校卒業後は大学に進学し、いずれ海外リーグに挑戦したいと考えていた。しかし高校3年になった頃、パナソニックから今回のチャレンジについて話があり、熟考の末、挑むことを決めた。

「自分は海外で活躍したいという思いがあるんですけど、そのためには、より高いレベルのバレーを、できるだけ早く体験しないといけない。大学生以上のレベルのバレーを早く体験したいなと思って、大学とVリーグの両立を視野に入れて活動することになりました」

 大学に進学せずVリーグに進む道もあるが、筑波大への進学も諦めたくなかった。

「トレーニングなど専門的な知識を学べるのでそれをバレーに活かせるし、現役を辞めた後にバレーに携わっていくためにも、教員免許を取りたいので」

 クビアクは、「日本のバレーのレベルを上げるためには、みんなで若い選手の成長を助けなければいけない。若い選手はハイレベルな環境の中で、プロの選手と一緒にやることでより早く成長する。特に牧のような210cmのアウトサイドは、世界の中でも本当にレアだし、日本の中でポテンシャルが一番と言っていい選手だと思う。今のことだけを考えるのではなく、日本の将来のために、彼の才能をもっと伸ばさなければ。私たちと一緒にプレーすることで、彼はもっとうまくなれる」と、このチャレンジに激しく同意する。

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