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松永幹夫が涙した「イソノルーブルのオークス」から30年 桜花賞で敗れた“裸足のシンデレラ”の名勝負を振り返る
posted2021/05/22 11:01
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Sankei Shimbun
今から30年前、1991年の牝馬クラシック戦線で主役の座を競ったのは、若武者を背にした2頭の女傑だった。1頭はデビュー3年目、20歳の角田晃一が乗るシスタートウショウ。もう1頭は、デビュー6年目、桜花賞の3日後に24歳になった松永幹夫のイソノルーブルだった。
桜花賞で1番人気に支持されたのは、トライアルの4歳牝馬特別を無傷の5連勝で制したイソノルーブルだった。4戦目までは38歳のベテラン・五十嵐忠男が騎乗していたのだが、クラシックに向けて、成績が上位の松永に乗り替わっていた。
市場取引価格が500万円の抽選馬が、まさにシンデレラストーリーのヒロインになろうとしていたのだ。
一方のシスタートウショウは、新馬戦から角田が乗りつづけ、前走のチューリップ賞まで3戦3勝と無敗で来ていた。
こちらは名牝シラオキの流れをくむ良血で、名門オーナーブリーダーとして知られるトウショウ牧場の生産馬だ。
レースぶりの異なる無敗の2頭
両馬とも無敗であることに加え、イソノルーブルは前走を3馬身半差、シスタートウショウは2馬身半差で勝っていたように、ここまですべて完勝という点でも共通していた。
しかし、レースぶりは大きく異なり、イソノルーブルがスタートからスピードで他馬を圧倒してきたのに対し、シスタートウショウは末脚の切れ味で他馬をねじ伏せてきた。
桜花賞でイソノルーブルに次ぐ2番人気に支持されたのは、牡馬混合重賞を2勝していたノーザンドライバー、3番人気はこれも重賞を2勝していたスカーレットブーケ。シスタートウショウは4番人気だった。
どれが勝つにしても、序盤から主導権を握るのはイソノルーブルだと思われていたのだが――。
発走直前に「事件」が起きた。