振付師から見た坂本の凄さ「自由な魂を持っている」

　ロシア勢欠場となったモンペリエ世界選手権では、坂本選手が女子の優勝候補とみなされている。彼女にとって、プレッシャーはどのくらい重いものだろうか。

「オリンピックでメダルを取ると、かなりのエネルギーを消耗する。彼女は現在まだ回復中です。でもプレッシャーに関しては、オリンピックのSPはこれまでになかったほど緊張したと思います。彼女があんな泣き方をしたのは、久しぶりです。あれ以上緊張することは、ないだろうと思います。それに僕はいつも、試合は自分との闘いだと言っていて、彼女はそれをよく理解している。彼女は世界選手権でまだメダルを取ったことがないので、その意味でもプレッシャーはないと思う。求められているのはオリンピックよりも良い演技をするということだけ。彼女にはそれができると思います」

　容易くない要求をさらりと口にするリショー氏だが、彼から見て、坂本選手の最大の長所はどんなところか。

「カオリはとても個性的な選手です。彼女は誰の真似もしておらず、いつも自分らしさを失わない。そして自分自身を受け入れている選手です。それと同時に、彼女は人目を惹くスケーターで、氷の上にいると目をそらせない。自由な魂を持っている、特別な選手だと思います」

早すぎる引退時期…女子の問題点「まるでジョークのようです」

　リショー氏は、女子フィギュアの未来にとってどんなことが重要だと感じているのか。

「現在の女子の問題は、大人の女性が、うちの12歳の娘のような体形の少女と一緒に戦っていることです。男子、ペア、アイスダンスでは、経験を積み、年齢を重ねていくにつれて選手たちは円熟し、上達していく。ネイサン（・チェン）やユヅ（羽生結弦）の15歳のときと、20歳の時を比べてみてください。当然20歳の方が上手くなっている。ところが女子は15歳がピークで20歳では引退している。まるでジョークのようです。スポーツでもアートでも、経験を積むほど熟練してレベルが上がっていくのが普通です。それなのに女子だけは15歳の時に跳んでいたジャンプが、20歳ではもう跳べなくなっている。これはスポーツとして問題です」

　リショー氏の思う適当なシニアの年齢はいくつからなのか。

「僕がルールを作るわけではないけれど、16歳でもない、17歳でもない、18歳が適当だと思っています。大体18歳になると成長も止まって大人の体形になる。それより若い選手は、ジュニアで競わせていれば良いでしょう。ジュニアの方が難しいジャンプを跳んでいても構わない。シニアの女子はシニアらしい、バランスの取れた完成度の高い大人の滑りで勝負をしていけば良いと思います」

　北京オリンピックでのワリエワのドーピング事件をきっかけに、シニアの年齢制限を引き上げることが再び真剣に取り上げられている。リショー氏の主張するように、この年齢設定をどうするかが女子の未来の方向性に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

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