濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「芸能人に何ができる」批判も…大河出演女優・向後桃が辿り着いた“約束の地”「私はスターダムでプロレスがしたい」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/02/22 17:00
2022年からスターダムに参戦している向後桃。2月23日の大会では、フューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦する
病と闘うプロレス人生「交差点を渡るだけで息が…」
これまでの向後のプロレス人生は、その「覚悟」を掴むためにあったと言ってもいいだろう。
デビューしたアクトレスガールズは“女優によるプロレス団体”と呼ばれた。向後も舞台関係者の紹介で団体にスカウトされている。その少し前からプロレスを見ていたので、自信はなかったが練習生になった。
自信がないからこそ熱心に練習した。実は病気と闘いながらのプロレス生活でもある。バセドウ病と膠原病。疲れやすく、食べないとすぐに痩せてしまう。
「とにかく食べるようにしてますね。お腹がはち切れるくらい食べれば、翌日は調子がいいみたいな感じです。さすがにそれを毎日は無理なんですけど(笑)。プロレス入りした時はけっこう回復してたんですけど、ひどい時は大きな交差点を渡るだけで息が切れてしまって。そういう時期があっただけに、プロレスをやるかどうか悩みました。やりたいんだけど……と」
プロレスラーとして、まずはランニングや筋トレで体力をつけることが大事だった。
「一時期は体脂肪率が8%になりました。それだけ筋肉、体力がついたんですかね。力は案外あって、リングの設営、撤収の時にも役に立つんですよ」
外野の声「芸能人に何ができる」…落ち込む向後を救った存在
病気のこと、体調のことは常に意識している。逆にいうと、自分にとってはそれが普通のことだからことさらに大変だとは思っていない。今は定期的に検査し、薬を飲んでいれば調子は安定しているそうだ。
それでもデビュー以降、落ち込むことは多かった。練習量では他の選手に負けていないつもりだったし、むしろ「体が細い分、人より努力しなければ」と思っていた。タッグチーム「Wもも」を組んでいた谷ももとは、団体の合同練習以外にも自分たちでリングを借りて自主トレーニングに励んだ。
「やりたいことをやりたいだけ練習してました」
けれども、なかなか試合が組まれない。さらにコロナ禍で大会そのものも減ってしまった。「芸能人に何ができる」とか「あんなに細くて大丈夫なのか」という外野からの声もつきものだった。見返すには勝つしかないが、それ以前にチャンスがない。大事な興行の出場メンバーに選抜されないこともあった。そんな時に救いになったのが、岩谷麻優の存在だった。
「麻優さんも、最初は全然勝てなかったんだからって。2020年に出た麻優さんの自伝(『引きこもりでポンコツだった私が女子プロレスのアイコンになるまで』)はバイブルです。いつも“これ読んで頑張ろう”と思ってましたね……」