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「芸能人に何ができる」批判も…大河出演女優・向後桃が辿り着いた“約束の地”「私はスターダムでプロレスがしたい」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/02/22 17:00
2022年からスターダムに参戦している向後桃。2月23日の大会では、フューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦する
向後を衝き動かした“フューチャー王座への思い”
ピースパ、メキシコ遠征、タイトルマッチ。プロレスリングWAVEではリーグ戦に出場した。経験を積み実力をつけ、2022年はいよいよ飛躍の時だと、向後を知るプロレスファンなら誰もが感じていたはずだ。そのタイミングでアクトレスガールズの方針転換があり、スターダムに参戦表明。すぐにフューチャー王座挑戦が決まった。試合が組まれず悩んでいた日々が嘘のような、怒涛の勢いだ。
フューチャー王座の存在も、スターダム参戦に向け背中を押してくれた。
「このベルトを巻いた選手がどんどん羽ばたいていくというジンクスもありますし、“未来を担う選手が巻くベルトって、こんな素敵なものある?”って思うんですよ」
フューチャー王座の保持資格は20歳以下もしくはキャリア3年未満。4月30日でデビュー3年になる“平成最後の新人”向後には時間がなかった。
「今しかない。いま動かないとフューチャーに挑戦できない」
そんな気持ちに衝き動かされてのスターダム参戦でもあった。2月23日の羽南戦は、もしかすると最初で最後の挑戦になるかもしれない。試合と練習だけでなく、今は羽南の研究にも余念がない。
「でも羽南さんもファンの人たちも、次の防衛戦の相手が誰かみたいな話をしていて。それが悔しくて仕方ないんです。なんとか予想を覆さなきゃ」
もちろん、競争の激しいスターダムで生き残っていくには、さらにレベルアップする必要がある。技を増やしたいし、同時に基本のブラッシュアップも欠かせないと向後。STARSの“教育係”葉月とは2人きりで練習することもある。
「スターダムの選手はレベルが高くて、その中で試合をするのはワクワクします。技の威力とかスピードも凄いんですけど、ベースの部分、たとえば腕の取り方、ロープワークにも細かい技術と理論があって」
「スターダムの向後桃」は、もう“憧れ”を隠さない
成長を続ける一方、彼女はスターダムでもリングネームやコスチュームを変えていない。デビューしたその日から、キャリアはずっと“地続き”なのだ。入場曲『天雷』は、かつて谷ももが使っていたもの。メキシコ遠征時に谷が欠場中で「一緒に闘うという気持ち」から譲り受けた。現在、谷はPURE-J所属。道は分かれても、入場曲によってタッグとしての思いが続いていると言っていいのかもしれない。
多くの選手にとって、闘う場所を変えるのは“心機一転”だろう。だが向後にとってスターダムは来るべくして来た場所、いわば“約束の地”だ。落ち込み、悩んだ新人時代も、他団体参戦や海外遠征でつけた実力も、結果としてすべてがここにつながった。
その上で、これから“スターダムの向後桃”、“STARSの向後桃”をどう作り上げていくか。いずれ、他の選手と同じようにオリジナルの入場曲ができるだろう。コスチュームも新しいものになる。新コスチュームの腰には、フューチャーのベルトがあるかもしれない。
もう憧れを隠す必要はなくなった。憧れが現実になって、フューチャー・オブ・スターダムのタイトルマッチでは勝つか負けるかの現実とも向き合う。
「フューチャーの保持期限が来たら、次にやりたいことも実はあるんです」
覚悟を決めて飛び込んだスターダム。今は口に出せない「やりたいこと」も、きっと自分で動けば現実にできるだろう。デビュー以来、彼女はずっとそうしてきたのだ。
(撮影=杉山拓也)
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