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ワリエワ騒動で話題 …“鬼コーチ”エテリ「泣き出す生徒は数え切れない」それでも全国から生徒が集まるのはなぜ?〈ロシア強豪クラブを潜入取材〉 

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栗田智

栗田智Satoshi Kurita

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photograph byGetty Images

posted2022/02/19 11:05

ワリエワ騒動で話題 …“鬼コーチ”エテリ「泣き出す生徒は数え切れない」それでも全国から生徒が集まるのはなぜ?〈ロシア強豪クラブを潜入取材〉<Number Web> photograph by Getty Images

メドベデワ、ザギトワなどロシアの強豪選手たちを育ててきたエテリ・トゥトベリーゼ。拠点となる強豪クラブ「サンボ70」とはどんな施設なのか?

「後発である私たちの強みは、まっさらな状態からのスタートだったことです。ゼロから人材を揃えるのはリスクもありましたが、熱意とアイデアのある次世代のコーチを迎えることができました」

 現在70歳のタチアナ・タラソワ、76歳のアレクセイ・ミーシンと、ロシアフィギュアスケート界が誇る大御所たちに対して、トゥトベリーゼは43歳と若い。'08年当時30代前半の、まだ目立った実績こそないものの才気あふれるコーチは、歴史の浅いフルスタリヌィだからこそ過去の慣習にとらわれることなく指導に邁進できた。

エテリ「親が愛する子を思って厳しくしつけるように…」

「鉄の女」「氷の女王」などさまざまな異名を持つトゥトベリーゼの指導は非常に厳しいことで有名だ。「練習で150%、本番で110%」の言葉に表されるように、毎日の練習を最も重視し、生徒に質と量の両面を徹底して要求する。指導の際の口調は激しく、生徒の心に鋭く突き刺さる。

「泣き出す生徒は数え切れないほど見てきました。女子と男子とで涙の流れ方が違うことさえわかったほどです。小さい頃のジェーニャ(メドベデワの愛称)は叱られるとよくリンクの隅に行って戻ってこなくなりました」とトゥトベリーゼは微笑む。

 ジャンプでよく失敗する幼いメドベデワをリンクの上で引きずり回したこともある。「氷の上がそんなに好きなら、ほら! どう、気に入った?」と。これにより「絶対に転ばず跳んでみせる」という強い執念が芽生えたとメドベデワは振り返る。

 幼い子どもたちにとって厳しすぎるのではとの批判もあったが、意に介さない。

「私は生徒に真実だけを伝えます。たとえ耳の痛い話でもリンクではそれが必要だと思うからです。親が愛する子を思って厳しくしつけるように、私も生徒たちを愛し、育成の責任を果たしているのです。私は普通のコーチです。普通の親と同じように」

厳しくても「先生は私にとって母親のような存在です」

 実際、生徒たちのほとんどがトゥトベリーゼのことを第二の母ととらえている。親しみを込めてではなく尊敬と信頼からだ。すでに10年以上の師弟関係が続くメドベデワは「もちろん家に家族はいます。でも、ここにもまた大切な家族がいるんです」と語り、ザギトワも「先生は私にとって母親のような存在です。たしかに厳しいですが、どうして厳しくするのかわかっていますから怖くありません」と話す。

<後編に続く>

(EU JAPAN SPORTS=取材協力)

#2に続く「はい、泣いて!」基礎から演技表現までみっちり指導…“メディア嫌いで有名”エテリが語っていた教え子への想い「幸せを感じてほしいのです」

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