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フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
トゥルソワ17歳「2度と氷の上に立たない!」 なぜロシアの最強エテリチームに亀裂が入った? 選手が“移籍→復帰”を繰り返した歴史
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/18 17:05
2月17日のフィギュア女子の表彰式直前、号泣しながらエテリコーチの腕を振りほどくトゥルソワ
シニアの年齢制限ルールにも影響する可能性
だが今回ワリエワが要保護の年齢であることを理由に北京オリンピックの継続参加が許された事実は、シニアの年齢制限ルールに大きな影響を与えるだろう。
現在はオリンピックの前年の7月1日までに15歳に達していることが条件だ。だがジュニアあがりの身体の小さな少女がメダルを取って早々に怪我を理由に引退、というケースが何度か続いたため、シニアに上がる年齢を引き上げる案は、これまでもISU総会で提起されてきたが可決されなかった。
WADAが16歳未満は要保護としていることを理由にCASがワリエワを擁護したことにより、シニアの年齢を要保護ではない年齢に引き上げるべきという声が、世界中の関係者からあげられてきている。
次の2026年ミラノコルティナオリンピックまでに、ルールが変更されるかどうか注目される。
ワリエワのケア、トゥルソワの今後…エテリチームの未来は?
飛ぶ鳥を落とす勢いだったエテリチームに対する評価は、ワリエワのドーピング事件により暴落した。これからの選手だけでなく、過去に彼女が育てた選手たちも、しばらくの間は疑惑の目で見られることは避けられないだろう。
ワリエワが禁止薬物を摂取していたのなら、水分の摂取まで管理していたコーチ陣が知らなかったということはあり得ない。これはいつから、どのくらい行われていたことなのか。組織的なものなら、ワリエワが単独のケースとは考えにくい。
また懸念されるのは、まだ15歳のワリエワの今後である。失格にすれば本人に取り返しのつかない害を与えるとCASは裁定したものの、取り返しのつかない害はすでに受けてしまったように見える。世界中で自分のニュースが流されたというプレッシャーを、真っ向から受け止められる15歳など、この世に存在するわけはない。今後薬物に対する身体のケアはもちろんだが、専門家による心のケアも必要になってくるだろう。
また「二度と氷の上に立たない」と言ったトゥルソワはどうするのか。その後のミックスゾーンでは、「一時の感情で口走ったこと。世界選手権をどうするかなどは、これから考える」と答え、またコーチとの関係は「誰との関係も変わっていない」とコメントした。
エテリチームの今後は、WADAの捜査がどのような展開を見せるかにもかかっている。名誉回復のチャンスが与えられるのか、あるいは何か大きな改革を強いられるのか。
これからしばらく、社会の厳しい目にさらされることが予想される。
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