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「翔平には“無制限”が必要だった」“二刀流”を信じ続けたエンゼルス指揮官が明かした「大谷翔平との対話」《単独インタビュー》
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2022/03/14 11:01
大谷翔平の二刀流での挑戦を支え続けたエンゼルスの知将、ジョー・マドンが明かす“対話”の真実
非現実的と捉えられていた二刀流は、子供たちの新たな夢となり、野球界の新たなトレンドとなった。レッドソックスの25歳の外野手であるアレックス・バードゥーゴは、来季から救援投手としての二刀流に挑戦するという。概念を打ち破った大谷への称賛は後を絶たない。マドン監督も同様だが、大谷と同じことをできる選手はいないと語った。
「正直に言うけれど、まず、次に出てくる選手は、翔平のような才能があるとは思えない。こんなことはそんなに頻繁に起きることではない。そんなことが起きたとしても、それはかなり先のことになるだろうね。仮にもし、そういう選手が出てきたら、フロントオフィスはその選手に数々の制約を設けるだろう。従って監督は負担を軽減することに終始し、その選手をどのように使うかについて、うちのように何でも言い合えるオープンな環境は持てないはずだ。誰が次の二刀流選手であろうと規制が強くなり、もっと監視されるだろう。日本や世界のどこかに、翔平のライバルになるような若者がいるかは知らないが、これは技術と耐久性のコンビネーションなんだ。そして忘れてはいけないのは、これは週に何日かの話ではなく、毎日なんだ。もし次に二刀流で出てくる選手がいるならば、その人は翔平と同じだけのスキルと試合への愛情がなければ、これはできない。それは間違いないことだ」
“ユニバーサルDH制”にふくらむ構想とは?
マドン監督の熱論は早くも来季へと及んだ。来季からはユニバーサル(両リーグ)DH制へとルールが変更になる気運が高まっている。となれば、ナ・リーグ主催の交流戦であってもDHとしての出場が可能となる。指揮官は楽しそうに構想を練り出した。
「来年も同じように彼を起用するだろう。シーズン後半になって意味のある試合であれば、守備につかせることも多くなるかもしれない。究極的には状況による。だからナ・リーグで投手が打席に立つことがこれまで同様に継続されるならば、何か異なることをする必要がある。それがなければ、来季はすべての試合が今季のア・リーグと同じになる。もし降板後にもう1打席立たせたい場合は、今季以上に彼を守備につかせ、3つのアウトを取らせることに抵抗がなくなるだろう。来年、DHがユニバーサルだったら、彼が投げるときにナ・リーグのラインナップに使えるかを調べてみようと思う(笑)。それもオプションだといいよね。なぜならユニバーサルDHになれば、彼を投手で使っても打席にキープできることになるかもしれない。ルールをでっちあげるというのはときに邪魔になる(笑)」
知将の発想は柔軟かつ独創的。夢は広がる。そして、マドン監督がいま大谷に求めるものはただひとつ。それは、健康だ。健康でさえあれば、大谷に「不可能」の文字はない。