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「ロコ・ソラーレには“投げにくさ”が皆無」「韓国戦はケミストリー対決に」好発進のカーリング女子を元五輪代表・金村萌絵が解説
text by
金村萌絵Moe Kanamura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/13 17:30
1次リーグ4戦目のROC戦に勝利し、笑顔がはじけるカーリング女子日本代表のロコ・ソラーレ
アイスについては初戦前の公式練習で日本の選手たちも「曲がる」と言っていたのですが、試合を重ねるごとに曲がりが少なくなっています。難しいコンディションのなか、セカンドの鈴木夕湖選手が試合後に泣いてしまうほどミスが出たのですが、日本はサードの吉田知那美選手とスキップの藤澤選手のところでチームとしてカバーできていました。
ROC戦の勝負の分かれ目になったのは、やはり2対5のビハインドから追いついた第7エンドでしょうか。リードされている側は2点を返し、相手に1点をとらせ、また2点を返す……とじわじわ追いかけるのがカーリングのセオリーですが、そこで3点を取れたことはとても大きかった。このエンドもリードの吉田夕梨花選手、セカンドの鈴木選手までは必ずしも思い通りの展開ではなかったのですが、サードの吉田知那美選手の2投が本当に素晴らしく、一気に状況を変えてくれましたね。
強豪国もミスをする「難しいアイス」にどう対処する?
今大会の日本は要所でのスチールも目立ちます。ただ、そこはある意味でボーナス的な部分が大きいのでは、と感じています。基本的に、先攻では相手に1点を与えるようなシチュエーションを作ることがセオリーです。しかし難しいアイスゆえ、相手のミスが出てスチールになることが少なくないのです。
2戦目のカナダ戦に関しても、第4エンドのスチールは相手のオーバースイープ(掃きすぎ)でした。カーリングは投げ手だけでなくスイーパーも氷を読むのが大事なのですが、強豪のカナダですらそこを見誤ってしまう。ROC戦の後半でも、1点を与えるシチュエーションでたまたま相手が氷を読めずにミスをするシーンがありました。“棚からぼた餅”というと言葉が悪いかもしれませんが、ここまでは運に味方されている面もあると思います。
アイスの傾向はこれからも変わっていくはずです。加えてストーンの変化をつかむことも重要になります。カーリングのストーンの裏は、コップのように円形の“エッジ”と呼ばれる部分だけが接地しています。エッジを粗いヤスリで研磨すると、氷をよく噛んで曲がりやすくなる。研磨は大会前に行われるので、直後の公式練習ではストーンがよく曲がるんです。しかし試合を重ねるごとに摩耗して、軌道が次第にストレートになっていきます。
前回の平昌五輪でもそうだったのですが、おそらく大会途中のどこかでまた、エッジを削るタイミングがあります。そうすると曲がり具合は“読み直し”になる。各国とも、今後はどんな傾向になるのかわからない、と考えているはずです。アイスも含めて、細かい変化にいち早くアジャストできたチームが有利になっていくのではないでしょうか。