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格闘技PRESSBACK NUMBER
「首の骨が折れたのでは」カメラマン戦慄の強烈スラムから大逆転…“柔術マジシャン”ノゲイラがボブ・サップ戦で見せた不屈の闘志
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2022/02/03 11:01
ボブ・サップの怪力で持ち上げられ、強烈なスラムを食らうアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ。ダメージは甚大だったが、2ラウンドに劇的な一本勝ちを収めた
ボブ・サップとの「格闘技史に残る一戦」
2002年8月28日、この日は朝から快晴だった。屋外ではあったが、国立競技場は蒸し暑かった。試合が開始される夕方にはいくぶん気温は下がったが、リング上はテレビ中継用の照明に照らされ、おそらく40℃以上になっていただろう。日本の格闘技史上に残るノゲイラとサップの一戦は、セミファイナル前の第6試合として行われた。
当時のサップはデビュー3戦目だったが、その驚異的な身体能力とパワーで時代の寵児になりつつあった。二人の体重差は60キロ近くある。関係者の間では、サップのパワーの前にはノゲイラのテクニックは通用しないという声も多くあった。
試合が始まってすぐにノゲイラがタックルに入ると、サップは軽々と相手の身体を逆さまに持ち上げ、垂直に頭から落とした。ドンという鈍い衝撃音。リングサイドから見ていると、首の骨が折れたのではないか、と感じるほどのインパクトがあった。
かなりのダメージで動けないノゲイラは防戦一方で、サップが一気呵成にパンチで攻め込む。下からの寝技を仕掛けるのだが、怪力ですべて跳ね返される。グラウンドで一方的に殴られたまま、1ラウンドが終了。ノゲイラはゴングに救われた。
2ラウンドになってもサップの突進は衰えず、パワフルな攻撃を繰り返す。ノゲイラはタックルで対抗するが、テイクダウンを奪えずに下になり、1ラウンドと同じように苦戦が続く。その試合展開に、9万人を超える大観衆が詰めかけた場内からは諦めムードが漂い始めた。私も勝者になると思われるサップを中心に撮影。しかし、ノゲイラは逆転の機会を虎視眈々と狙っていた。
2ラウンド3分を過ぎたあたりでスタミナが切れ、グラウンドで急に動きが緩慢になったサップ。その隙をついてノゲイラはポジションを入れ替え、サップの剛腕を腕十字で極めにいった。両腕のクラッチが外れたと同時に、勝利の女神はノゲイラに微笑んだ。