- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「『箱根駅伝をやってきたからです』と答えられる大人になりたい」“3区職人”遠藤大地はなぜ実業団ではなく就職を選んだのか?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2022/01/27 11:05
4年連続で箱根駅伝の3区を走った帝京大の遠藤大地。大学ランナーの実力者はなぜ実業団ではなく就職を選んだのか?
18.5kmで駒澤大に追いついて3位に浮上したが、先頭争いをしていた青山学院大の太田蒼生と、東京国際大の丹所健には離された。区間4位の力走も、結局、最後も区間賞には届かず。日本人最高記録も塗り替えられた。
「力は出し切ったと思うんですけど、実力が足りなかった。区間賞も取れなかったですし、先頭に立つこともできませんでしたから。そういう部分では悔しさは残ります。でも、やれることはやったかなと思います」
重圧からも解放され、走り終えた直後は「ほっとしたっていうのが一番ですね」と言う。これが遠藤大地のラストランだった。
「箱根駅伝をやってきたからです」と答えられるような大人に
チームは総合9位と、目標の3位に届かなかった。
「4年間駅伝の目標を達成したことがなかったので、最後の年は達成したかった」
ちょっぴり後悔は残したかもしれない。それでも、往路は過去最高の2位と健闘。そして、連続シード権も、チーム史上最長となる5年に伸ばした。
「(シード権を取って)後輩に繋げられたのは、最低限、良かったかなと思います。
本当に、チームメイトにも恵まれて、たくさんの人に支えられた4年間でした。競技をやっているときはつらいこともあったんですけど、振り返れば、幸せな4年間だったなと感じています」
4年間は誇りに思っていい。遠藤は、多くの人々の記憶に残る“箱根ランナー”だったのだから。
「目標に向かって努力することができる力は、陸上競技で育まれたと思う。それは、仕事が始まっても、持ち続けていきたいです。陸上で得たものを生かしながら、目標を立てて、それに向かって努力していけたらと思います。
監督が常におっしゃっていたことでもあるんですけど、箱根駅伝を走ったことが話題として先行するのではなく、『なんでそんなに頑張れるんだ?』と聞かれた時に、『箱根駅伝をやってきたからです』と答えられるような大人になっていきたいと思っています」
新しい世界に足を踏み入れても、箱根駅伝を目指し全力で駆け抜けた4年間は決して無駄ではなかった――そのことを一番理解しているのは、遠藤自身。それを証明してみせる人生がこれから始まる。