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「体育館裏、彫刻刀で左腕を…」マイケルや金正恩に技を披露した大道芸人が壮絶イジメ体験を中高生に伝える理由《中3で渡米、17歳でW杯》 

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キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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photograph byCHANG-HAENG

posted2022/01/17 11:00

「体育館裏、彫刻刀で左腕を…」マイケルや金正恩に技を披露した大道芸人が壮絶イジメ体験を中高生に伝える理由《中3で渡米、17歳でW杯》<Number Web> photograph by CHANG-HAENG

中3で単身渡米し、世界を旅してきた大道芸人「ちゃんへん.」。W杯といった世界大会を勝ち抜くために、ストイックに技を磨いてきた

 この頃、技で魅了することに加えて、ちゃんへん.が新たに“やりがい”を見出したのが中高生との対話だった。

「2008年に奈良県で外国人教育研究会という催しがあったのですが、そこにパフォーマーとして声がかかりました。ジャグリングと話を織り交ぜたものを披露すると、ある先生が自分たちの学校(一条高校)でしゃべってほしいということになったんです。そもそもジャグリングは楽しんでもらえても、在日コリアンとしての生い立ちとか歴史とか、そんな話を聞いてもつまらないんじゃないかって思っていたんです。

 でも話をしてみると、意外にも生徒さんたちは真剣に聞いてくれて、途中で泣き出す子もいた。感想文でも『自分の中で何かが変わりました』とか書いてくれる子もいて、それならやり続けたいなと思ったんです」

 連日のように日本全国の学校を巡ったちゃんへん.のパフォーマンスは、Twitterでの拡散効果も手伝って瞬く間に話題となり、今では公演だけで生計を立てられるほどになった。昨年は158校に足を運び、「多い時で年間220回も行ったことがありますよ」と笑い飛ばす。これは並大抵のスケジュールではない。全国への移動と技の練習を含めれば、ほとんど休みなしで働いていることになる。

壮絶なイジメを救った母の言葉

 昨年12月、ちゃんへん.は京都国際高校に招かれていた。昨夏の甲子園でベスト4入りした高校野球部員もいる前で、圧巻のジャグリングパフォーマンスとともに、熱弁をふるった。怒涛の90分の様子を少し紹介したい。

 前述の通り、彼は京都・宇治市にある通称「ウトロ地区」で育った。在日韓国・朝鮮人が多く住む地域でもあるが、朝鮮学校ではなく日本の学校に通った。だが、そこで待ち受けていたのは壮絶なイジメだった。すべて「在日コリアンだから」という理由だ。

 小学3年の頃から無視や落書きといった嫌がらせが始まった。4年生になると、朝の登校時にロッカーの前で待ち伏せされ、決まって体育館の裏に連れていかれた。「おい朝鮮人! 朝の入国審査じゃ!」と殴られ蹴られ、彫刻刀で左腕を刺されるまでにエスカレートした。毎日のように繰り返される苦痛な時間に「自分は生きていたらあかん人間なんや。どの死に方が一番楽に死ねるんやろ?」と考える日もあったという。

 そんなちゃんへん.を救ったのは、母の言葉だった。

「イジメが発覚してから、加害者と僕も校長室に呼び出されたんです。そこにオモニ(母)がやってきてこう言いました。『素敵な夢を持っている子はイジメなんてせえへんのや。お前らのやっていることはただの弱いもんイジメや。強さを自慢したかったらルールのある世界で勝負せえ!』って。今思えば、加害者の子にも選択肢を与えたわけで、本当に正しい怒り方だったと思います。この言葉は一生忘れません」

 家族の支えによってイジメを乗り越えたちゃんへん.は、当時ブームだった「ハイパーヨーヨー」に出会い、それをきっかけにジャグラーの道にのめりこんで行った。そこから世界的なパフォーマーの礎を築いていくのである。

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金昌幸
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