「避けられてる？」「余裕がなかった」それぞれの葛藤

　追いつかれまいと走り続ける小林と、追いかけながらも“共存共栄”を考える碇。2人の成長は大津の躍進に欠かせないものだった。

　選手権予選ではFW小林、トップ下・森田、ボランチ碇の縦関係が躍動し、小林は4試合連続の9ゴールと大爆発。碇も初戦と決勝でそれぞれ1ゴールを挙げ、チームは3年ぶりの選手権出場を手にした。プレミアリーグWESTも4位でフィニッシュし、迎えた選手権では前述したとおり揃って2ゴールをマークしている。

　そして3年生が抜け、いよいよ新チームがスタートした。小林と碇は数少ない選手権経験者として、チームを牽引していかなければならない立場となった。

　しかし肝心の2人の関係は、まだ成熟しきってはいないようだ。インタビューも佳境に差し掛かったとき、碇が本音を口にした。

「僕が入寮して1カ月くらいは俊瑛さんとよく話していたんですが、話す回数がどんどん減っていって、距離を感じるようになったんです。正直『避けられているのかな？』とも少し思うようになりました。本当はもっと俊瑛さんと話したかったけど、喋りかけづらかった。ずっと俊瑛さんが僕のことをどう思っているのか気になっていたんです。新チームのことを考えると、このままでは良くないのかなと……」

碇は「徐々に俊瑛さんと距離を感じるようになった」と吐露した　©Takahito Ando

　目標とする先輩ともっと話がしたい碇と、後輩にポジションを奪われまいと必死で自分を磨く小林。決して悪意があるわけではなく、ライバル心が勝るあまり、自然と距離をとってしまっていたのだろう。高校生にとって、先輩・後輩の距離感は独特なものだ。同じ長身FWとしてポジションを争う相手となれば、なおのこと接し方がわからなくなるのも想像に難くない。

　碇の発言を受けて、小林にも本音を聞いた。

「仲は悪くはないです。でも、僕に余裕がなかったのかもしれません。明日麻と組めばさらに引き出しが増えるし、いいパートナーになれるはず。もっと話した方がいいとは僕も思っています」

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