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《引退》西川周作からの確信的ごっつぁんゴール…控えめな赤嶺真吾が最後に話した“点取り屋の自負” 故郷で終えた幸せなサッカー人生
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/01/14 17:02
昨季限りで現役引退を決めた赤嶺真吾(38歳)。渡り歩いたクラブそれぞれで、ファンの記憶に残るをゴールを量産した
当時、大分トリニータのセンターバックだった上本は、2008年4月29日の対戦をよく覚えている。世間を騒がせたレフェリーとのいざこざがあり、ピッチ上でFC東京の赤嶺と会話を交わしたせいもあるが、CKからスキを逃さずに決勝ゴールをマークした後輩の成長ぶりに驚いた。
「高校時代のイメージとは違いました。前線で時間をつくれるし、ゴール前の駆け引きもうまい。何よりも競り方が特殊。タイミングをうまくずらし、DFのこっちが勝ったつもりでいるけど、気がつけば真吾に負けているんです。センタリングに対しての動きも独特で、マークに付きにくいFWでしたよ」
グラウンドの外ではおっとりして、いつも柔和な笑顔を浮かべていたが、それでゴールは奪えない。十八番のこぼれ球に詰める“ごっつあんゴール”は、優れたポジショニングの賜物。ゴールにはどん欲で、計算高かった。
決して感覚だけではないという。ミーティングで分析担当の話を頭に入れるのはもちろん、個別でも情報を聞きに行き、自分でも徹底して相手のことを研究。センターバックが2枚の場合は、競り合いが得意ではない方とあえて勝負した。代名詞の一つだった献身的なチェイシングも相手DF、相手GKの利き足、ボールの持ち方の癖などをインプットし、追い込み方を考えていた。分析が常にゴールにつながるわけではないが、ピタリとハマることもある。
浦和GK西川に襲いかかったゴール
仙台時代のゴールは、鮮明に記憶に残っている。
2014年10月18日、ユアテックスタジアム仙台に浦和レッズを迎えた一戦。相手がGKを経由して、自陣からパスをつないでくることは織り込み済み。右サイドのDFからGK西川周作へバックパスが出た瞬間だった。
「左足が得意な西川選手の右足側にパスが出たので、左足に持ち直すと思いました。足元の技術にも自信を持っていましたから。でも、そこが狙い目でした。滑り込んで押し込むイメージを持ち、左側に思い切ってスライディングしました」
気迫のこもった魂のゴールと報じられたりしたが、実は綿密な計算のもと、してやったりの得点だったのだ。
「ちょっとした駆け引きですが、こうした小さな積み重ねが2桁得点につながり、仙台では2011年、2012年と2年連続で14ゴール取れました。プロキャリアを長く続けられたのも、この数字があったからだと思います」