- #1
- #2
欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
デシャンから待ったがかかりユベントス行きが破談に……ソル・キャンベルが明かす幻の移籍話と指導者への熱き想い
text by
アルトゥル・レナールArthur Renard
photograph byGetty Images
posted2022/01/12 17:01
アーセナルやイングランド代表で活躍したソル・キャンベル。今度は指導者としての成功を目指している
――なるほど。
「そう言えば、ジョバンニ・ファンブロンクホルストが監督だったフェイエノールトも見学した。オランダのリーグタイトルを獲得したシーズン(2016-17シーズン)のことで、チームが波に乗っていた時期だ。ジオに頼まれて『インビンシブルズ(無敗軍団)』時代のアーセナルの話をしたよ。俺は精神面の強さとパフォーマンスの一貫性について簡単なスピーチをさせてもらったんだが、話を聞いてくれた選手たちの中には、当時ベテランになっていたディルク・カイトもいたよ」
経営難に陥ったクラブを最終節で残留に導く
――監督初挑戦は2018年11月、マクルズフィールドでした。19試合を終了したリーグ2(4部)の最下位で、経営難にも陥っていたクラブを最終節で残留に導いたわけですが、どのようなサッカー哲学に基づいてチームの立て直しに着手したのですか?
「まっとうなサッカーをするという自分自身のポリシーを貫こうとしただけさ。結果に対するプレッシャーは大きかったが、チームは負け慣れてしまっていたので、まずは一人ひとりが自信を取り戻すことが必要だった。監督として、選手たちが自分自身の力を再び信じられるようになるためのツールを与えなければならなかった。話をする度に『残留を実現するには後ろからパスを繋ぐサッカーをすることだ。自信を胸にボールを持て』と言って聞かせたよ」
――クラブ自体の問題もあったはずです。
「その通り! 問題はピッチ外にもあった。給与未払いへの抗議で、1人の選手が出場を拒否したこともあった。それもキックオフの3時間前になってから(苦笑)。最終節では、『給与を払ってもらえていないことも、ストを考えていることも理解しているが、ここは何とか大局を見るようにしてくれ。今後のためにも残留するしかない。そのために、この試合は絶対に負けが許されない。任せたぞ! カモン!!』と言ってチームを送りだしたよ。
振り返ると、信じられない状況だった。試合が始まってリードを奪われたが、最後は1-1の引き分けに持ち込んで残留を決めた。ただひたすらホッとして、自宅に戻ってから妻と一緒に流した涙は忘れられないよ。それほどプレッシャーは大きかった。監督として初めての仕事でもあったし。降格は避けられないと思われていたんだ。会長でさえ、そう思っていた。そんなクラブで、周囲の予想を覆すことができたのは大きかった」