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世界的ピアニスト反田恭平27歳、“同学年”羽生結弦の美しさを語る「同じ年なのでちょっと悔しいな」「羽生選手はショパンを理解している」 

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石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/01/12 06:00

世界的ピアニスト反田恭平27歳、“同学年”羽生結弦の美しさを語る「同じ年なのでちょっと悔しいな」「羽生選手はショパンを理解している」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

『バラード第1番』を演じる羽生。過去4シーズン、同プログラムで数々の名勝負・名演技を見せてきた

「それまでまったくクラシックに興味のない方にも届けてくれたのが羽生選手のあのプログラムでした。よく『羽生くんの曲ですよね』と言われるんですよ」

「(羽生選手は)ショパンをしっかりと理解している」

 叙情性に満ちた美しい旋律が印象的な『バラード第1番』は、ショパンのバラードで初期の代表作。テンポや調性の変化によって、人の心に訴えかける傑作は、ピアニストでも完璧に消化するのは難しいと言われている。

「僕も作品の背景を調べた上で演奏していますが、『バラード第1番』は、ドラマティックで、激動のドラマが繰り返される作品。途中、短調から長調に変わるところでは、祖国ポーランドを大切にしていたショパンの自分の生い立ちや未来を描いている。さらに中間部分の美しいメロディでは、長調のところでポーランドに抱いている幻想やファンタジーを表現し、それが現実だったという気づきもある。最後の熱烈的なコーダでは、あれはもはや夢だったのかもしれない、幻想だったのかもしれないというところで曲が終わるんです。そういったストーリーはピアニスト視点としては壊されたくない世界観なんですが、羽生選手の演技を見ていると、そういったものをしっかりと理解していることが伝わってくる。編集も相当考えられているなと感じますね」

 また、羽生は作曲家のみならず、演奏者の“音”にも寄り添い、表現を追求してきた。

 最高得点(当時)をたたき出した2015年GPファイナルでは、様々なピアニストの『バラード第1番』の演奏を聴いたなかで、一番しっくりきたというクリスチャン・ツィメルマンの演奏を選び、細部まで研究したと語っている。

 フィギュアスケートのプログラムでは時間の制約で流しきれない原曲の部分も消化し、完成度の高いプログラムに作り上げた『バラード第1番』を、反田もNumber本誌のインタビューで認めている。

“サムライヘア”は緻密な戦略

 羽生結弦と反田恭平は同じ1994年生まれの27歳。2人はともに各々の世界を牽引する存在だ。共通点は同じ年、世界で活躍する存在というだけではない。

 そこに辿り着くための努力はもちろん、緻密な計算や戦略を立てて実行に移し、自身の目標を達成して成功を掴んでいる。

 反田も5年に1度の開催(今回はコロナ禍のため1年延期した)のショパンコンクールに挑むにあたって、緻密な戦略を練り上げた。

「とりあえず、まずは人に覚えられること。海外の人にとっては“恭平”という名前も発音が難しいようで、コンクールでも最後に2位と発表されるときまで“コウヘイ”と言われたんですよ(笑)。とりあえず、名前や顔よりも、国籍と出てきたときに印象に残るものを植え付けほうがいいと考えました」

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