フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「夢に年齢制限はない」遅咲きのフィギュア全米女王マライア・ベル25歳の輝き「4回転も3アクセルもなし。それでも貫禄の演技だった」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/01/12 11:00
フィギュアスケート全米選手権にて、25歳にして初優勝を果たしたマライア・ベル
全米はローティーンの選手も活躍する舞台
そんな中で、女子のタイトルはSP1位だったベルとSP2位だったカレン・チェン、そしてSP4位の14歳のイザベル・レヴィットの間で競われた。
全米選手権ではISUのような年齢制限を設けておらず、過去にはローティーンのチャンピオンもいた。アリサ・リュウは最年少13歳でタイトルを取り、長洲未来は14歳、タラ・リピンスキーも14歳でチャンピオンになっている。
フリーでは14歳のイザベル・レヴィットが「白鳥の湖」からの「ロシアンダンス」で勢いのある演技を見せ総合210.75を獲得した。今季のジュニアGPシリーズで、中止になったファイナルに進出していた新星である。
4回転も、3アクセルもないベルの演技。それでも…
ベルのフリーは、シェイ=リーン・ボーン振付、K.Dラングの「ハレルヤ」だった。
4回転はもちろん、3アクセルもない。3+3もやらなかった。技術的な内容でいえば一昔前の女子の構成である。それでも丁寧な滑り、完璧な姿勢のレイバックスピン、情緒たっぷりの音楽表現など、見せ場は十分にあった。貫録と大人の女性の品格が感じられ、フィギュアスケートとはこういうものだったな、と久しぶりに実感させてくれる演技だった。
ベテランになったことの利点は何か、と聞くとベルはこう答えた。
「私の場合は、たまたまティーネイジャーのうちに世界のトップクラスに加わるということは起きなかった。人にはそれぞれ、時期というものがあるのでしょう」
ベルは、ロシアから次々新人が出てくる一方で、エリザベータ・トゥクタミシェワのように息の長い活動をする選手もいることを例に出した。
「それに確かイリナ・スルツカヤは最初に世界タイトルを手にしたときは、23歳でした。だから少し前までは、このくらいの年齢のトップ選手というのはそれほど珍しくありませんでした。25歳はそれほど高齢だとは思いません」