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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
《スタメン起用で15位→6位》まもなく38歳も進化は止まらない! フランクフルトを好転させた長谷部誠の攻撃的な守備の凄み
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2022/01/09 11:01
1月18日に38歳の誕生日を迎える長谷部だが、高い戦術眼とリーダシップを示し、今なおフランクフルトの不可欠な存在であり続けている
マインツ戦では決勝ゴールを演出
グラスナー監督からも称賛の言葉がこぼれてくる。
「37歳になっても、なお学習意欲が衰えない模範的な存在だ。マコトは『前に出て守る』守備において大きな成長を遂げている」
フランクフルトで200試合出場というメモリアルゲームとなった、第17節マインツ戦の決勝ゴールには長谷部の素晴らしさが詰まっていた。
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自陣ペナルティーエリア付近。相手がフリーで走り込む選手へのスルーパスを狙ったが、長谷部は下がらず前へ出る。パスコースを予見して動き、見事にカットすると、そのままボールをコントロールし、中盤の鎌田大地へパスを送った。鎌田がさらに前線へと展開し、鋭いカウンターから最後はリンドストロームがゴールを決めたのだ。
グラスナー監督は試合後に「得点シーンは狙い通りだった。ボールを奪って、マインツ守備陣が高い位置にいるうちに素早い攻撃で攻略してみせた」と満足げに振り返っていた。ただし、もしパスを通されていたらマインツが先制していてもおかしくなかった。ボールをカットしただけでなく、そこから攻撃へつなげた長谷部のハイレベルなプレーがチームを貴重な勝利へと導いたのである。
主力の復調にも貢献
フランクフルトにとって、もう1つ大事なのが主力選手を休ませることができた点だ。オーストリア代表のヒンターエッガーは、競り合いの強さとセットプレーからの得点力が持ち味の中心選手だが、今季は開幕から調子がよくない。怪我の影響もあるのだろうが、簡単に相手にかわされたり、不用意にボールを失ったりと、不安定なプレーが続いている。
長谷部がいなかったら、監督はヒンターエッガーを起用し続けるしかなかった。調子が悪くても重要だから、という理由で。
しかし、ブンデスリーガは甘くない。長谷部がいたから、ヒンターエッガーがしっかり休んで気持ちを落ち着け、調子を取り戻す時間を持てた。休みがあったからこそ復帰した終盤の3試合で好パフォーマンスを披露し、チームの連勝に貢献することができた。
長谷部がいなかったら、フランクフルトが前半戦を6位で終えることはできなかったと思う。よくて中位、あるいは下位に沈んだままだったかもしれない。
まもなく38歳になる長谷部は、いまだチームに不可欠な存在である。《後編につづく》