「最近、うちの娘まで言うんで。『パパ、半端ないって』って」

「知らなかったんですよ。（大会が）終わってから気づきました。地元に帰って、みんなが言っていたから『は？』ってなって」

――ロシアW杯で、また注目されました。

「活躍すれば、これが出るなっていうのは思っていましたよ。最近、うちの娘まで言うんで。『パパ、半端ないって』って。おもしろいですよ。もう上の子は5歳なんで。そう言われることは、プロの選手としては悪いことじゃないんでね」

――新記録は意識していましたか。

「1試合2点は取る、って考えていたんで。ちょっと少なかったですけどね。普通にやれば取れるだろう。だから、いつもどおりにって感覚で取り組んでいました」

――左足でのゴールも多かった。

「中学時代からシュート練習はずっとやってましたからね。（高校時代のゴール映像を見て）基本的に高校生は、強いシュートを打てば入りますからね。当時の俺、体が細いですよね。懐かしい」

――決勝で負けて、表彰式ではすぐにメダルを外した。涙はありませんでした。

「そうですね。悔しかった……気がしますね。もう11年前か。だから、悔しさは詰まっていますけど、今は悔しいって思いよりは、懐かしいほうが強いですよ。あったなーって。この時期になるとね。いいっすよね。選手権の空気感とか」

――大迫選手にとって、高校サッカーとは。

「なんか、終わってから『良かったな』と思えるな。高校サッカー、いいっすよ。ほんとに」

――もう一度高校時代やりたいですか。

「やりたい。中学からもう一回。小学校からでもいいか、って思う」

「自分が決めて勝つ」ことを貫く

　日本代表レベルのFWなら誰しも「俺が点を取ってチームを勝たせる」と言い、それを実行して階段を上ってくる。それでも、いつしか、できなくなる限界点がやってくる。体格に恵まれない日本人FWが最前線で突っ張り続けるには、あまりにも厳しい現実があるからだ。

　味方への要求を高め、周囲に依存して生き残る道を探る。ポジションを下げたり、相手にぶつからないよう、動き出しを極めるストライカーもいる。それも立派な道である。器用に変化する日本人らしさとも言い換えることができるかもしれない。

　しかし大迫はW杯でも、ブンデスリーガでも「自分が決めて勝つ」ことを貫く。その信条の一端が、試合前に報道陣の前で多くを語らない姿に表れているような気がしてならない。

「俺が決めるか、決めないか」

　高校サッカーで伝説になったストライカーは、決勝で広島皆実を前にした時と同じ感覚で今も世界と対峙している。それこそが今でも「半端ない」と言われ続ける源泉であり、大迫の希少性だと感じるのだ。