#995
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<回想インタビュー> 鹿児島城西・大迫勇也「半端ない通過点」

2020/01/18
今も破られぬ大会記録10得点の無双ぶりで、代名詞「半端ない」を生んだ伝説の選手権。だが伝説を伝説で終わらせず、世界と戦う今も半端ない大迫にとって、快挙は通過点だった――。(Number995号掲載)

 まだヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本代表の指揮を執っていた2018年3月のことと記憶している。ロシア・ワールドカップへ向けた強化を狙い、ベルギー・リエージュに遠征に出た日本代表。濡れた枯れ葉の香りと鼻に入ってくる冷気が朝を告げ、昼間はうららかな日差しが眠気を誘う。時の流れすらゆっくり感じるような地で、大迫勇也は口を開かなくなった。

 ハリルホジッチ監督解任へ向けたカウントダウンの音が大きくなり、チームには無機質な空気が漂っていた。エースと言われた男も、取材対応日に「また(今度)!」と言い残し、バスに乗り込むことが増えていった。以降、ロシアW杯、昨年初頭のアジア杯でも同じ行動を取るようになった。昨年、その理由を尋ねた。

「試合をやる前に何を言っても意味ないでしょ。俺らは試合に負ければ、結果を残せなければたたかれる。プロの世界ではそうあるべき。だからやる前に何を言っても、意味がない。FWだったら決めるか、決めないかなんで。チームなら勝つか、負けるかなんで。やる前に、こうしたい、ああしたいと言ってもね」

 取材に応じない選手は今も昔も珍しくない。取材を拒まれたとき、先輩記者から授かった「日本を代表してここにいるのだから」という説得する言葉を準備していた。ただ、鹿児島城西高3年から取材してきた身としては、大義名分を振りかざす気にはなれなかった。他を入り込ませない、信条を感じたから。その感触を得たのはこれが初めてではなかった。

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photograph by Asami Enomoto

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