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藤井聡太竜王がドキドキ気味なのをフォローする羽生善治九段が優しい… 観る将マンガ家が描く《将棋ハイライト/12月》
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph byJunsei Chida(illustration)
posted2022/01/06 11:01
観る将マンガ家・千田先生が描いた「12月の将棋ハイライト」。2021年のイラストは関連記事からもご覧になれます!
渡辺名人のツイッターによると、アーセン・ヴェンゲルの『赤と白、わが人生』、野村克也さんの『指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論』、落合博満監督を描いた『嫌われた監督』を読まれているそうです。そのつぶやきに妻氏は「ついにお弟子さん取るのかしら」と深読み。豊島九段も岩佐美帆子さんを初めての弟子に取られましたし、2022年の新しい関係性に注目したいと思います。
師弟トーナメントとサミットが新しい視点で楽しい
(2)「師弟トーナメント」で感じる関係性と、豪華すぎオールスター
師弟と言えば……女流に続いて年末年始で「ABEMA師弟トーナメント」も開催されています。佐藤康光会長の着想から始まった同棋戦、師匠と弟子がチームを組んで戦っています。チーム動画では仲良しで知られる深浦康市九段と佐々木大地五段が料理を作ったりするなど、これまでのものとはまた一味違いつつ、距離感の近さも感じるつくりになってます。
それとともに興味深いなと思ったのは開催前に行われた「師匠サミット」です。
参加者は谷川浩司九段、井上慶太九段、森下卓九段、深浦九段、鈴木大介九段、木村一基九段、中田功八段、畠山鎮八段。そうそうたる面々が一門独自のルールなどを語りつつ、ともに戦う弟子を発表しました。鈴木九段が「師匠は絶対」、谷川九段が「弟子は子育てに似てます」と語る姿はもちろん、畠山八段が弟子の伸び悩みについて語ると、中田八段が励ますなど……その様子は、なんというか保護者会っぽいというか、違う味があって楽しめました。
そんな中で予選リーグでは畠山八段が井上九段、稲葉陽八段に連勝し、弟子の斎藤慎太郎八段がウキウキする様子などもキュンとしました。そういった師弟の関係性も楽しんでいければと思っています。
豪華絢爛なメンバーだった将棋オールスター
年末には新たな試みとして「将棋オールスター東西対抗戦」が実施されました。もちろん僕ら夫婦も、当然のごとく使命感を持って観に行きました(笑)。対局としては西軍の全勝となりましたが、佐藤会長と谷川九段のダブル解説など、そこに集う棋士の豪華さをただただ堪能しました。
そんな2人に続いて、羽生善治九段と藤井聡太竜王のツーショットが観られるなんて……佐藤会長と谷川九段が「我々は前座なんで」と謙遜してましたけど、いやいやそんな……(笑)。藤井竜王はステージ解説が初とのことで緊張していたようでしたが、羽生九段が優しくフォローすることで後半はハキハキと笑顔でしゃべっていました。藤井竜王の対応力、そして羽生九段の人間力に感服します。
なお羽生九段は10代の頃、デパート屋上での将棋イベントで初解説した時、声が小さくて怒られたという秘話まで披露してくれました(笑)。
豊島九段と永瀬拓矢王座の解説もサプライズで、みんなが大喜びでした。2人が盤面を読み解く際、頭の回転力が凄まじすぎるんですが、そんな2人の嬉しそうな姿を、置いてけぼりになりつつ楽しむ。これもまた1つの醍醐味なんだなと感じます。
あとはリレー対局を初めて見ましたが、《永瀬-藤井》の後ろに《羽生-豊島》が座るという構図が面白かったりなどなど、書ききれないことがいっぱい……やっぱり2022年も将棋イベントはいっぱい足を運んで絵にしたい。少しでも観る将の皆さんに空気感が伝わればと思います。