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「私の原点はおじいちゃん」初の1万mで日本歴代2位の衝撃…拓大の18歳不破聖衣来とは何者なのか?
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byKasane Nogawa
posted2021/12/29 17:04
「陸上界のフワちゃん」とも呼ばれるが、その実力、潜在能力にそんなニックネームはやや不釣り合いか
「出てくると思いますよね? でも、あそこまで強いとないんです。みんな、不破の誰よりも努力をする、ストイックな姿勢を見ているから『同じチームでありがとう』って。ご飯をあまり食べられなくて苦労している姿も見ていると『お母さんの気持ちになっちゃう』という子もいました(笑)。応援したくなる選手なんです」
18歳ランナーの原点は「おじいちゃん」
世界陸上の参加標準記録を突破し、「パリオリンピックを目指したい」と言う不破。彼女のランナーとしての原点はどこにあるのか。
群馬県高崎市立大類中時代から3000m、クロスカントリーなどでほぼ無敵だったが、決してエリート的な指導を受けてきたわけではない。幼少期から3つ上の姉・亜莉珠(ありす)の背中をひたすら追いかけてきたのだ。
「自分はずっと昔から姉を追いかけて走っていたんです。もちろん勝てないんですけど、姉が自分と同じ学年の時の記録とかを見て、それで『あそこまで行きたい』と」
そしてその姉と走るのに付きあってくれたのが、「おじいちゃん」だという。
「私たちの原点が、おじいちゃんが小学校の頃に毎朝、持久走練習に付き合ってくれたことなんです。おじいちゃんが一緒にいてくれて、それで走るのが楽しくなって、大会にも出るようになったりした。学年によって決められた距離があって、その距離分を走っていました。自宅から小学校がすごい近かったので小学校のトラックで何周とかやって走ったり、大会で使うコースを実際に走ったり」
驚きなのは祖父が才能豊かな不破姉妹と一緒に走っていた、ということ。
「コーチというより、いつも一緒に走ってくれたんです。途中で抜けて、後半に私たちに合流して、一緒にラストで競ってくれたり。それがなかったら、たぶん走ること自体好きになってなかったので、本当の原点かなって思います。年齢ですか? 今、71か72なので、当時は65ぐらいだったのかな。元気ですよね(笑)。おじいちゃんは群馬の水上出身で、クロスカントリースキーで国体とかにも出てたらしいんです。だから、夏季練習で長い距離を走ったりはしてたので、それでたぶん付き合ってくれたんだと思います」
そして「今でも陸上のことはおじいちゃんに一番に報告はしてます」と、楽しそうな笑顔を見せた。
陸上界に舞い降りたニューヒロイン。不破が、12月30日の富士山女子駅伝、そして来年の日本選手権で新谷や廣中、そして田中希実らと繰り広げるである勝負が、今から楽しみだ。
別冊付録には、柏原竜二さん、神野大地さんらも寄稿してくれた「通が教える“僕だけの観戦法”」や、大迫傑さんから後輩たちへのメッセージ、相澤晃&伊藤達彦両選手に取材をした「大迫さんに続き、そして追い越すその日まで」、そして出場20大学の全主務が教えてくれた「我が校のいぶし銀エースを見よ!」も掲載。
大充実の別冊付録、箱根駅伝のテレビ観戦の“相棒”としてお楽しみください。