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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“宇宙一かわいい”スターダム王者・中野たむが“唯一無二”である理由「誰よりも呪われて、誰よりも狂って」《特別グラビア》
posted2021/12/28 17:16
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
スターダムの“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座を保持する中野たむは、3月3日の日本武道館大会でジュリアに勝って戴冠し、ここまで6度の防衛に成功している。
その軌跡は「たむロード」と呼ばれる。単なる防衛ロードではなく、中野たむだからこその、彼女にしかできないタイトルマッチばかりだったからだ。
端的に言えば感情むき出し。しかもその感情は“気合い”や“執念”ばかりではない。嫉妬、あるいは怨念までをも相手にぶつけるのがたむの試合だ。「白いベルトは呪いのベルト」だとたむは言う。
「3月に戴冠した時は、ジュリアのベルトというイメージが強かったと思います。それをどう“たむ色”に変えていくかというところでプレッシャーもありました。でも防衛する中で、中野たむの世界、生き様をリングで見せることができたと思ってます」
「アイドルはどんなレスラーよりも泥臭い」
たむロードと呼ばれる前から、彼女は“自分の道”を模索し続けてきた。もともとはアイドル、しかもいわゆる地下アイドルだ。嫌な思い、悔しい思いなら数えきれないほどしてきた。“地下”に分類されるグループだと芸能界には越えられない壁があることも知った。ただ、だからこそ「アイドルはどんなレスラーよりも泥臭い」強さがあると言えるのだ。
プロレスは人生の逆転をかけた舞台。デビューしたのは“女優によるプロレス団体”、芸能界出身者が多く所属するアクトレスガールズだった。だがそこには安納サオリ、万喜なつみという2トップがいた。では自分は何をすれば輝けるのか。たむは電流爆破マッチのリングに上がり、団体も離れてスターダムへ。激しい闘いに揉まれ、いつしか自分のユニット「コズミック・エンジェルズ」を結成するまでになる。白川未奈、ウナギ・サヤカと3人で作ったユニットには、2021年に2人新メンバーが加入した。それだけ魅力のある集団になった証拠だから、素直に嬉しいとたむは言う。
“白いベルト”の因縁
白いベルトをめぐっては、ジュリアと抗争を展開。それこそ自分たちにしかできない闘いをしてきた。
「試合中に髪の毛を引っ張りあって。ブチブチと抜けたり切れたりするんです。技も激しくてどっちかが死ぬんじゃないかと思うような試合をしてきました。その時からずっと狂ってました」
タイトルマッチでジュリアに2度敗れ、それでも追いすがって3度目でベルトを巻いた。日本武道館、ジュリアが要求した「敗者髪切りマッチ」に勝ってのことだった。
自分もそうだったから、防衛戦でも“狂った”相手と闘いたかった。
「私が持つ白いベルトは、みんながほしくてほしくてたまらない、喉から手が出るほどほしくて狂ってしまうようなものにしたかった」