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プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「高校行ってないです。友達いないです。そんな私に目標ができた」“キモオタ”たちを魅了する悪の華・鹿島沙希の女子プロレス道
posted2021/12/26 17:03
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
スターダムで活躍する女子プロレスラー・鹿島沙希のTwitterには、“キモオタ”という言葉が頻繁に出てくる。
「キモオタの為に追加チェキ撮ってやるか」「買えなかったキモオタの為にアホみたいな量追加してやったぞ!」「キモオタ達大丈夫???」
一般的にはマイナスのイメージを与える“キモオタ”というワードだが、鹿島はその独自のニュアンスを以下のように解説してくれた。
「私が使う“キモオタ”は、グッズをたくさん買ってくれたり、SNSで応援してくれたりして気持ちよくしてくれるオタクのことを略して“キモオタ”って呼んでいます。鹿島沙希を全力で応援してくれる人たち。決してディスっているわけじゃないですよ。むしろ、お褒めの言葉なんです。ファンもそれを理解してキモオタと呼ばれることに誇りを持っているから、私も胸を張ってキモオタって呼ぶし、向こうからも自信を持って『私はキモオタです』って言ってくれています。いい関係です」
スターダムにおいて、鹿島のキャラクターは異彩を放っている。黒いコスチュームをまとった細身の体には、ふてぶてしさと自信が同居しているように見える。
「鹿島沙希はキャラクターではない。不思議とリング上では素の自分が出せるし、どこへ行っても応援し続けてくれるキモオタのことは大好きです」
「見るんじゃなくて、自分でやりたいの?」
島根県で過ごした少女時代。いつの間にか、鹿島はプロレスというものに魅了されていた。
「お母さんがプロレス大好きで、夜中にテレビで見ていたんです。私も自然に、起きていたら一緒に見るようになった。小学校高学年くらいですね。島根でプロレスが開催されるときは、会場でも観戦しました。でも、女子プロレスは知らなかったんですよ。ある日、たまたまチケットをもらったんですけど、あまり興味はなかったんです。失礼な話ですけど、『女子プロレスか、どうしようかな?』みたいな。正直まったく乗り気じゃなかった」
当時の鹿島は学校にも行かず、毎日のようにプロレスの映像を見る生活を送っていた。
「17歳のときでしたね。何もしていなかった。同世代はみんなキャピキャピして高校に行って青春しているのに、私は家でプロレスのDVDを見ていました。闘龍門の悪冠一色(アーガンイーソー)というヒール・ユニットが好きだったんです。団体問わず、男子プロレスのDVDをよく買ったりしていました。あと、ケンドー・カシンさんがめちゃくちゃ好きだった!」
女子プロレス観戦に最後まで乗り気ではなかった鹿島だが、せっかくもらったチケットを無駄にするのももったいない。母と一緒に、鳥取で開催された大会に足を運ぶことになった。そしてこの小さな決断が、鹿島の人生を大きく変えることになる。