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<金メダルペアに連勝>「憂鬱で逃げ出したかった」バドミントン志田千陽・松山奈未組が覚悟を決めたある先輩の言葉
posted2021/12/12 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
12月12日、バドミントンの世界選手権がスペイン・ウエルバで始まる。3連覇が懸かっていた桃田賢斗は腰痛のため欠場となったが、東京五輪混合ダブルス銅メダルの渡辺勇大・東野有紗組をはじめ、実績を残してきた選手たちが日本代表に名を連ねる。一方で初めての世界選手権を迎える選手もいる。中でも注目が集まるのが女子ダブルスの志田千陽・松山奈未だ。
上り調子で大会を迎える。インドネシア・マスターズ、インドネシア・オープンと国際大会で連勝。しかもインドネシア・オープンの決勝で破った相手は東京五輪金メダルのグレイシャ・ポリイ、アプリヤニ・ラハユ組(インドネシア)。持ち味の粘りとスピードをいかし、堂々渡り合っての勝利だった。
先週末まで行われたワールドツアーファイナルズでは惜しくも準優勝に終わったものの、準決勝ではポリイ、ラハユ組を1時間を超える死闘の末、前週に続いて破ったことは価値がある。
松山は準決勝で得た手ごたえをこう語った。
「気持ちの部分でひくことがなく、勝てたのでよかったです」
志田は3大会を通じての成果をこう言葉にしている。
「この3週間は、自分たちの成長を感じられて、たくさんの経験を積むことができました」
次世代ダブルスの期待の星
2人は「パリ五輪の有望株」「次世代を背負うペア」として、これまでも期待を集めてきた。
現在24歳の志田は、女子ダブルスのエリートと言ってよい存在。青森山田中学、高校でバドミントンに打ち込んだ。青森山田は「ダブルス王国」と呼ばれるほどダブルスの名選手を送り出してきたバドミントン部がある。2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得した藤井瑞希・垣岩令佳組の2人をはじめ、東京五輪に出場した2組のペア、福島由紀・廣田彩花組、永原和可那・松本麻佑組のうち福島と永原が青森山田高校の卒業生だ。数々の選手が育った環境の中、志田は中学、高校と全国大会でダブルスの日本一に輝いている。
志田の一学年下の松山は九州国際大学付属中学、高校でバドミントンに打ち込んだ。北京、ロンドン五輪に出場した潮田玲子など4名の五輪代表選手を輩出している名門校だ。
2人はそれぞれの学校でチームメイトとダブルスを組んで活動する一方、ペアを組んで国際大会に出場するようになり、2015年の世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得した。