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親会社の業績は600億円以上アップ? 2021年の大ヒット競馬ゲーム「ウマ娘」が塗り替えた“数字”とは
text by
河村鳴紘Meikou Kawamura
photograph byCygames, Inc.
posted2021/12/04 11:02
2021年にメガヒットした「ウマ娘 プリティーダービー」
美少女がターフを走っている――。文字で書くと違和感満載なのに、ゲームを見ると全く気になりません。目の肥えているゲームファンが、文句をつけられないレベルに仕上げたところで「勝負あり」です。いや実際の競走馬はしゃべれませんので、むしろ競馬を知らない人には、「ウマ娘」の方が演出は上と思う人もいるでしょう。
もちろんゲームとして、繰り返し遊べるうえに、馬の能力値を示すなど初心者ゲーマーでも遊びやすい仕組みにしたのも大きかったでしょう。同作のダウンロード数は順調に伸びており10月時点で1100万を超えています。
アニメや声優の人気もありますが、アニメや声優の力を借りるのはメディアミックスの王道路線で、他コンテンツも取り組んでいます。似たタイプのゲームがなく独自性があり、時代背景やユーザーの志向に合ったのではないでしょうか。
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アニメはゲーム版配信より先の2018年に放送していたこともあり、視聴者には評判は良かったものの、それ以上の流れにはなったとは言い難いところ。つまり固定ファンはいましたが、ファンのすそ野が広がり、影響力が出たのはスマホゲームの力が大きいと言わざるを得ません。
競走馬への支援金まで…ウマ娘が塗り替えた“数字”
ゲームの配信後にもユニークなエピソードが、一般マスコミでも話題になりました。引退した競走馬で「ウマ娘」にも美少女として登場するナイスネイチャ(牡)を支援する「バースデードネーション」は目標の300万円に対して3500万円を超え、例年とケタが一つ違う寄付が集まったのです。さらに競走馬の引退後にもスポットが当たりました。
また、「ウマ娘」に新キャラが追加されるたびに、その馬の名前がツイッターのトレンド入りとなっている状態です。
さらにウマ娘で競馬を知ったファンが、実際の競馬に興味を持ち、流入していると見られています。「ウマ娘」による実際の競馬への貢献度はと言うと、なかなか数字として出しづらいのですが、一つの指標になりそうなのが、今後発表予定のJRAの2021年の売得金額でしょう。過去2年では前年比約3%増で推移しています。大台の3兆円突破もですが、前年比の増加率も注目でしょう(「JRAの概要成長推移 売得金額・入場人員)」より)。
馬券の購入につながらずとも、若い世代が遊ぶスマホゲームで、競馬の世界に触れたのは、競馬業界にとってはプラスです。競馬ブーム時代に熱中したものの、その後“競馬離れ”した層にアプローチできたのも大きいと言えるでしょう。
親会社は「ウマ娘」効果でどうなった?
スマホゲームのすごさを示すのが、ゲーム「ウマ娘」を手掛ける「Cygames(サイゲームス)」の親会社であるサイバーエージェントの業績です。一言でいえば驚異的。「ウマ娘」単体の業績は出していませんが、ゲーム事業は「ウマ娘」の配信以降、爆発的な利益を出しています。