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国民栄誉賞に紅白審査員…政権も何もかもが乗っかりたがった“大谷翔平のMVP” 「大谷翔平美容」「ハリツヤ大谷肌」って何?
posted2021/12/01 06:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Hideki Sugiyama
11月15日に行われた帰国会見で今季を振り返った大谷翔平。その4日後、満票でア・リーグのMVPに選出された。
大谷翔平、アメリカン・リーグMVP(満票)。この凄さについてはあらためてここでやらなくてよいでしょう。「月刊スポーツ新聞時評」としてはスポーツ紙の食いつき方に注目しました。ああ、そうなるのかという案件を見つけたからです。
『オオタニさんに国民栄誉賞&紅白審査員の声』(日刊スポーツ11月20日)
この見出しをしばらく見つめてしまいました。MVPをステップに「さぁ、国民栄誉賞だ、紅白だ」というノリを感じたからです。昭和からの普遍(不変)の価値観が炸裂しているようで妙に可笑しかった。
ただこれは日刊スポーツが主張しているのではない。記事を読むと官邸で岸田首相が《国民栄誉賞の授与を検討するかどうかを問われると》というくだりがあった。一方の紅白うんぬんは《大谷のア・リーグMVPは、NHKで行われた紅白歌合戦の出場者発表会見でも話題に出た。》とある。つまりどちらも「記者団」のほうから聞いているのだろう。
やっぱり出てきた政府の人気取りと福本さんのあの話
私はこれまで「おじさんによるおじさんのため」の報道や価値観を「オヤジジャーナル」と呼んでネタにしつつ愛してきた。紅白歌合戦に誰が出るのか今もドキドキして騒いでいるのはオヤジジャーナルの見どころの一つなのである。もちろんそこには現場のお付き合いやしがらみもあるのだろう。それも含めて昭和の風景を今も確認できる。
そんなオヤジジャーナルしぐさを確認していたら政府が大谷選手に国民栄誉賞を打診したというニュース。大谷選手は「まだ早い」と言って辞退したという。
ここで面白かったのはあの「福本豊」のコメントをスポーツ報知が載せていたことだ(11月23日)。1983年に当時世界新記録の通算939盗塁を達成した福本氏は「立ちションベンができなくなるから」と言って辞退したというのがSNSであらためてウケていたのだ。「本紙評論家」として福本氏を抱える報知はそのタイミングを見逃さなかった。