中村の言葉は、そのことを語り、実際のリードも相手に合わせるのではなく、投手のベストパフォーマンスを引き出すことを意識した。同じボールをしつこいほど続け、投手が自信を持って投げ込めるリードに専念した。その結果が、僅差のシリーズを制する大きな要因となっていた。

　高津監督の選手起用も同じだった。

「1番は強くなったね、と言いたいです」

　優勝会見。日本一まで上り詰めたこのチームを振り返って指揮官はこう語った。

シリーズ2敗していたマクガフを回またぎで

「心も体も、チーム全体も本当に大きく成長したと思いますし、少々では弱音も吐かないですし、競ったときの強さであったり、色んな強さと成長を感じたシーズンだったと思います」

　シリーズ第1戦では土壇場の9回まで2点をリードしながら、絶対の信頼を持って送り出したクローザーのマクガフが、まさかの逆転負けを喫していきなり窮地に立たされている。しかもそのマクガフは第5戦でも同点の9回にアダム・ジョーンズ外野手の一発を浴びてシリーズ2敗目を喫してもいた。

　それでもこの試合では同点の10回2死から、またもマウンドに上げた。しかもボールの走り具合、変化球のキレが戻っているとみるや、回またぎで11回も送り出し、そして最後の12回も守護神としてマウンドに立たせたのである。

2回3分の1を無失点に抑えたマクガフ　©︎Nanae Suzuki

対照的だったオリックス・中嶋聡監督

　対照的だったのはオリックス・中嶋聡監督だ。

オリックス・中嶋聡監督　©︎Naoya Sanuki

　山本由伸投手がエースの意地を出し切ったような力投で9回までヤクルト打線を6安打11奪三振の1点に抑えると、継投に入った10回以降は相手打線に合わせて小刻みな投手リレーに入る。

　10回をクローザーの平野佳寿投手が0点で抑えると、11回は先頭の村上にワンポイントで左の能見篤史投手をぶつけ、続くドミンゴ・サンタナ外野手、中村、ホセ・オスナ内野手と右打者が続く場面で右の比嘉幹貴投手にスイッチ。さらに12回は山崎晃大朗外野手、西浦直亨内野手をサウスポーの富山凌雅投手で抑え、5回にタイムリー安打を放っている塩見を打席に迎えると、すかさず右の吉田凌投手を送り出した。

　特に富山はシリーズ4戦、5戦と2試合で中継ぎ登板して無失点でこのときも右の西浦を得意のフォークで危なげなく三ゴロに抑えていた。ボールも走り、何よりフォークのキレがあり、登板数も少なく疲弊もしていない。しかしレギュラーシーズンで対右投手に2割6分6厘ながら対左投手には3割2厘という数字を残す塩見に対して、データ重視で右の吉田をぶつける選択をした。

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