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《NBA》渡邊雄太「今夜は、すべてが完璧な感じだった」ナースHCが“たった1回のチャレンジ”を渡邊のディフェンスに使った理由
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2021/11/26 17:03
10月に負傷した影響で出遅れていた渡邊雄太。課題を口にしながらも、古巣相手に勝利した今季初戦を笑顔で振り返った
あのときの状況──。トレーニングキャンプ中、渡邊の契約はまだ一部しか保証されていず、開幕ロスター入り確定の立場ではなかったのだ。自分が出られない間にほかの選手が頭角を現してきたら、開幕前にカットされる可能性も十分にあった。
しかし、ラプターズのニック・ナースHCは、この時点ですでに渡邊を開幕ロスターに残すことは決めていたようだった。正式な発表こそ、開幕前日までなかったものの、渡邊が故障した翌日には「雄太が開幕戦までには戻ってこられることを願っている」と開幕ロスター入り前提で話をしていたぐらいだ。
その後、10月下旬には傘下のGリーグチームの練習に参加するまでに回復した渡邊だったが、今度はその練習中に同じ箇所を悪化させ、復帰までさらに時間がかかることになった。NBAに入って4年目にして最も長い故障離脱となった。
「もちろん焦りはありましたし、プレーできない苛立ちだったり、フラストレーションというのは正直かなりあった」と、渡邊は認める。そのうえで、できるだけ前向きなメンタルで離脱期間を過ごそうと心がけたとも言う。
「この夏、オリンピックの準備からオリンピック、(その後)サマーリーグに行って、そこでワークアウトしたり。プレシーズンも、今年のラプターズはかなりハードに練習していたので、身体が限界に来ていたのかなっていうふうに思って。もしあそこで小さい怪我をしていなかったら、もしかしたらもっと大きな怪我、それこそ、アキレス腱断裂だったりとか、そういう可能性もあったんじゃないかなと思うんで。焦る気持ちもありましたけれど、『今はお前、休め』って言われていると思って、休むところは休んで、ほかにできることをしっかりやろうっていうふうに前向きには捉えるようにしていました」
ナースHCが求める渡邊の力
ナースHCも、渡邊自身と同じぐらい、彼の復帰を楽しみにしていたひとりだ。決して多くの得点をあげる選手ではないが、それでもチームに欠かせない存在と評価している。
「うちには彼が必要だ」
渡邊の復帰試合前に、ナースはそう言っていた。ガードからビッグマンまで守れるディフェンス力。攻守で正しいプレーを選ぶ能力。インサイドに切れ込み、ボールを回し、チームに動きを作りだすスタイル。ハッスルやエネルギッシュなプレー。すべてがチームに必要な要素だった。