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「本当は…心が折れていたかも」TJ手術を経て1092日ぶりの一軍登板を果たしたDeNA田中健二朗が、いま伝えたい思いとは?
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/11/29 11:03
32歳を目前にした苦労人左腕の1092日ぶりの一軍登板に、ハマスタは割れんばかりの拍手に包まれた
「とにかくあのときはテンションが上がっちゃって……すごく高ぶっていました」
その後、田中はシーズン終了まで一軍に帯同され、8試合に登板、防御率0.00と来季に確実につながるピッチングを披露した。ビハインドの登板が中心だったが、10月6日の阪神戦や14日の広島戦では、ランナーをためたピンチの場面でマウンドに登場すると火消しを成功させ、存在感を示している。今季の登板を田中は振り返る。
「ボールうんぬんより、やっぱり一軍の体になりきれてなかったように感じましたよね」
調整をしていたファームでも連投やイニング跨ぎをして球数が増えると思い通りのボールがいかず苦労してきたという。
「やっぱり一軍は力感がぜんぜん違ったんで、体力的な部分をもっとやっていかなければいけないと思いました」
試行錯誤の中で見つけた新たな投手像
帰ってきた田中を見ていて気になったのは変化したフォームとボールの質だ。まずフォームに関しては、体の軌道が横から縦方向となり、テイクバックが小さくなった。以前よりも股関節の動きが柔らかくなって下半身に粘りが感じられる。田中は新しいフォームについて語る。
「改造したというほどではないのですが、とにかく負担がなくスムーズに動けるフォームを追求したという感じです。例えば、あれ以上肘を高くすると負担が多くなってしまい、1年間投げ抜くのが難しくなってしまいます」
ベストなものを見つけるためリハビリ中から試行錯誤をつづけた。
「トレーナーさんが新しいものを提示してくれたり、それに僕も納得してトライしたり。その結果、以前より自分の重心の位置が鮮明にわかるようになり、パフォーマンス的には確実に向上しました」
今季のストレートのMAXは147キロ。アベレージも含め真っすぐの球速は術前より3~4キロ上がっている。また切れの増したスライダーとフォークも印象的だった。しかしながら田中の代名詞ともいえるカーブをあまり投げることはなかった。その理由を次のように語る。