酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ヤクルトvsオリックスが日本シリーズ史に残る《神回》になった決定的要因 「勝利の方程式」のつぶし合いがエグすぎる
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/11/26 17:06
マクガフらはレギュラーシーズンで奮闘した。しかし初戦から「勝利の方程式」を両軍でつぶし合うという流れが、2021年の日本シリーズにはある
第5戦、メドが立ったはずの石山、マクガフらが……
<11月25日/第5戦>
ヤクルト●5-6〇オリックス
・オリックス
山崎福 5.2回77球5安1本5三2四2失2責
吉田凌 0.1回6球0安0本0三0四0失0責H
富山 1回9球1安0本0三0四0失0責H
ヒギンス 0.1回18球1安1本0三2四3失3責
山岡 0.2回17球0安0本0三1四0失0責○
平野佳 1回15球0安0本1三1四0失0責S
・ヤクルト
原 5.2回81球6安0本1三0四2失1責
田口 0.1回3球1安0本0三0四0失0責
石山 0.1回13球3安0本0三0四2失2責
今野 0.2回15球1安0本0三0四0失0責
大西 1回13球2安0本1三0四1失1責
マクガフ 1回18球1安1本1三0四1失1責●
「勝利の方程式」にメドが立ったヤクルトに対し、オリックスは模索が続いていた。この日の先発左腕、山崎福也は球数も少なく、6回途中まで2失点は上々の出来だったが、それでも救援投手は必要だ。吉田凌、左腕・富山とつないだ。
一方のヤクルトも、6回途中まで投げた原樹理が杉本に安打を打たれ、2死一、二塁となって降板。続く左腕・田口が左のT-岡田の打席でワンポイントリリーフするも同点タイムリーを打たれる。
しかしここからヤクルトは石山、清水、マクガフと信頼できる救援投手を並べることができる。有利な展開かと思えたが、石山が下位打線に3安打を集中され2失点。リードされたために今野、大西を繰り出すも8回表まで5―2とリードを奪われた。
オリックスは8回裏、前の試合で復調したと思われたヒギンスをマウンドへ。しかし先頭の塩見を歩かせると、青木も歩かせ、山田哲人に特大の同点3ランを浴びる。東京ドームの客席の大半を占めるヤクルトファンは狂喜乱舞したが、物語はこれで終わりではなかった。
中嶋監督の意地を見た山岡投入、そしてジョーンズ
オリックスはヒギンスの後に、先発投手の山岡を上げる。故障していた山岡は6月22日以来の登板だが、後続を断った。中嶋監督はあきらめていなかったのだ。
最終回、2試合連続セーブのマクガフがマウンドへ。しかしマクガフは初戦でヒギンスの炎上に連鎖するように炎上している。オリックスは代打、アダム・ジョーンズ。彼も初戦で決定的な四球を選んだ。物語は再現されるのか?
東京ドームに来てからも、ジョーンズは自分なりの準備をしていた。試合後半になると三塁ベンチからボールを2個持って出てきて、1個を中堅の福田に投げて、もう1個で左翼の吉田正尚とゆっくりキャッチボールをしていた。
これはチームの役に立ちたいということだけではなく、照明に目を慣らし、熱気に満ちたスタジアムの雰囲気に身を浸して慣れさせる意味があったという。同じ外国人のヒギンス、マクガフの2投手がプレッシャーに潰れていった中で、伊達にMLBで282本塁打を打っていないというところではないか。