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「合わせるのではなく合っていた」どん底で出会った相性抜群のパートナー…三浦璃来&木原龍一ペアの止まらない進化
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2021/11/21 06:00
時折笑顔を浮かべながら、伸びやかな演技を披露した三浦&木原ペア
競技生活から退くという選択肢も頭をよぎっていた。
「ペアをやってから最下位ばかりで、向いていないんじゃないかと思っていました」
ソチ、平昌そして計3度出場した世界選手権ではショートプログラムで一定以上の順位を残せずフリーに進めないまま大会を終えていた。ペアでの可能性を見出せず、シングルで1シーズン出場して引退することも考えていた。
そのとき話があったのが、前パートナーとペアを解消していた三浦とのトライアウトだった。それが転機だった。
「最初に滑った瞬間から、絶対にうまくいくと確信しました」
技の1つであるツイストリフトをしたとき、1回目から投げたいタイミングが100%合った。
「言葉では言い表せない、相性というのがペアにはあるんだなと思います」
三浦もまた、相性を感じた。
「ペアはどちらかが合わせるイメージでしたけど、滑ってみてお互いが合いました」
“5位”に実感した可能性
大会で自分たちの可能性をつかめたのは2019年11月のNHK杯だ。
「出場選手を見て『また最下位か』と思っていました」(木原)
ところが目標としていた得点を大きく上回り、5位となった。
実はフリー当日の公式練習ではうまく行かず、三浦は落ち込んでいた。それを見ていた木原は朝食に誘った。
「スケートに関係ない、どうでもいい話をしました」(木原)
その時間を持つことで「落ち着いた」と言う三浦は、「実は心が折れそうでした」と明かした。苦笑する木原に「笑わんといて」と返す一幕も、2人の相性を思わせた。